一見すると二律背反する事象を、構造的に理解してちょうどいい解を導き出すのはむずかしい

うちの会社は12月決算なので、1月が年度開始である。
現在来年度予算の詰めをしており、各部門の目標を整理しているところである。
その中で、ある部門から、歩留まりを改善をはかるという目標が出て、そのために(ある程度)在庫生産を推進したい、という話が出てきた。
 
歩留まり改善は昔からの課題で、今に始まった話ではないのだが、来年改めてここに注力して取り組んでいきたいということだった。
この部門の事業は、材料費の比率が高いため、歩留まりをちょっと改善するだけも材料費の削減につながり、業績改善に寄与する。
だから、歩留まりを改善することを非常に重要なのだが、ただ歩留まりを上げればいいかというと、そう簡単な話でもない。
 
この部門の生産形態は基本受注生産なのだが、歩留まりを上げようと思うと、まとめるつくることが求められ、そうなると必然的に製品在庫が増える。
なので、ただ歩留まりを上げるためだけにまとめて生産していると、今度は在庫が増えすぎて在庫回転率が下がってしまう。
しかもまとめてつくってしまうと、他の製品に振り向けることができず、欠品が出てしまうリスクも上がってしまう。
ということなので、歩留まりと在庫回転率の両方を見て、その両方を高いレベルで保つことが求められるのである。
 
ここで何が言いたいかと言うと、売上を上げるといった、1つの指標を上げればいいということであれば、(それが簡単なことかどうかは別として)頭の中を整理しやすいのだが、一般的には相反する2つの指標を同時に上げないといけないとなると、急に考えるのが難しくなってしまうということである。
 
上述の例では、在庫回転率をきちんと管理しながら歩留まりを向上させましょう、ということでとりあえずは落ち着いたのだが、実際にオペレーションに落とし込むのはこれからの課題となる。
関わるメンバーにきちんと理解させ、実行しないと、歩留まりは上がってけど、在庫回転率が下がって、業績全体ではマイナスの影響を及ぼした、なんてことになりかねない。
 
こういった、一方が上がると、他方が下がるといった事象については、基本人間の頭では理解しにくい。
もちろん、両方を高いレベルで維持することは不可能ではないのだが、どういったメカニズムでそれぞれの指標が動くのかをきちんと理解しなくてはならない。
 
なんてことを考えていると、最近同じようなことをよく見かけるな、と思った。
それは、新型コロナウイルスへの個人個人の対応に関してである。
 
TwitterYahoo!ニュースのコメントなどを見ていると、極端な発言が並ぶ。
コロナはただの風邪だから気にせず生活すればいい、といういわゆるノーガード派の発言から、外出はなるべく避けるべきとか、みんなきちんと自粛しろ、という自粛派の発言まで、幅広く並んでいる。
幅広いというより、両極端なコメントがそれぞれ並んでいると表現したほうが正しいかもしれない。
 
私の身の回りでも、ビジネスの席では、経済をまわすためには高齢者以外はもっと出るべきだ、なんて言う人もまだいるし、逆にあそこの会社で感染者が出たからもうすぐそこまで来ていると必要以上におそれる人も多い。
 
たしかに、コロナに関しては、人々の行動と感染者数はリンクする関係で、行動量が多くなれば感染者も増える傾向にはある。
しかしながら、この両方を高いレベルで維持することは不可能ではない。感染の原則をきちんと理解できれば、感染を防ぎながら行動することは可能である。
 
ただ、人間の脳は、このような一見すると二律背反的なものを、構造的にきちんと理解するようにはできていない。
どちらかに偏ったほうが、考えるのが楽なのである。
だから、問題ないと考える人はそういった情報ばかりを仕入れるし、逆に自粛すべしと考える人はそっちの情報ばかりを見てしまう。
 
コロナに対しては、構造的に理解できる人を増やしていくのがいいのか、それともそれはできないという前提でさまざまな施策を考えていくのがいいのか、その判断も難しいところである。
 
ということで、こちらを立てればあちらが立たず、という問題を解決できる人材は貴重だな、と思ったという話でした。