一蘭というエンターテイメント

先日、福岡のキャナルシティ博多に行ったとき、久しぶりに一蘭に行った。
言わずとしれた、博多ラーメンの有名店で、今や全国にお店を展開している。
私も東京で働いていたときは一蘭に行くのが楽しみで、仕事が遅くなった夜などによく通ったものだった。
 
さて、その一蘭。これまで何度も値上げを敢行しており、現在はラーメンが980円。今回は、ゆでたまごにネギのトッピングも追加して、〆て1,230円。なかなか贅沢な昼食になった。
私が初めて行ったのは確か大学に入ったかどうかくらいのときだったので、だいたい25年くらい前だが、そのときから比べると3割くらいは高くなっているのでないだろうか。
この値上げ、昔は苦々しく思っていたが、最近では流石だなと思うようになってきた。なぜなら、自分たちの価値をきちんと認識し、値上げをしてもそれだけの価値があると思わせていると考えるからである。
 
では、一蘭が提供している価値とは何なのだろうか。
私が考える一蘭の価値は、カスタマイズと替え玉にあると思う。
 
一蘭では、味の濃さや油の量、ネギの種類、チャーシューの有無、秘伝のタレの量など、自分好みに味をカスタマイズできるのは有名。
来るたびにその日の気分や体調で味を好みに調整できるので、飽きがこない。
これによって、新規客もリピート客にも、考える楽しみが提供されている。
 
加えて、替え玉。
替え玉自体は、博多のラーメンであればどの店でもあるしくみだが、この替え玉、慣れていない人やはじめての店だと、ちょっと勇気のいる行為なのである。
しかし、一蘭ではボタンで押して、替え玉の料金をトレーに入れれば、替え玉を注文できる。麺の固さも、紙に書けば、声を発する必要もない。
替え玉をやったことない人でも、気兼ねなく初体験できるよう、敷居をかなり下げているのである。
 
もっと言えば、最近はラーメンの麺の量を少なくしているとさえ思えてくる。
せっかく博多でラーメン食べたのだから、替え玉やってみたい。しかし、普通のラーメンでお腹いっぱいになっては替え玉もできない。そんなニーズに応えるために、麺の量を減らして、替え玉を体験できるようにしているのではないだろうか(確かめたわけではないが)。
例えそうだとしても、批判しているのではなく、そういった潜在的なニーズに対応している点ですばらしいことだと思っている。
 
と、こんな感じで、一蘭ではラーメンという食を提供しているだけではなく、博多ラーメンを楽しむというエンターテイメントもあわせて提供しているのである。
 
ちなみに、今回私も頼んだ、半熟塩ゆでたまご。今でこそコンビニでも同様のゆでたまごが販売されているが、この手の味がついていて、黄身が半熟のゆでたまご一蘭が最初だったのではないだろうか。殻がついた状態で提供されるのだが、待ち時間で剥いて食べていると、ラーメンがやってくるという按配で、ここでも暇にさせないという演出がなされている。
現在の価格は130円で、コンビニのそれとは倍くらいの値段がするが、改めて食べてみるとコンビニのものよりもおいしく、加えて殻を剥くことで待ち時間の苦痛を軽減しているのである。
 
こうやってラーメンだけをただ提供しているわけではないので、その分価格が高くても客は納得して来店するわけである。
もちろん、すべての客がそのことを顕在化して理解しているわけではないだろうが、潜在的にこういった点も評価しているので、少々値上げを客足が落ちないのだと考える次第である。
 
ただし、悲しいかな、今の私はラーメンとゆでたまごを食べたらそれでお腹いっぱい。替え玉を頼むかどうか悩むことすらなく店を後にした。
昔は替え玉が当たり前だったのだが。これが歳を取るということなのだなと、痛感させられた。
 
ということで、一蘭が提供している価値についての話でした。