「ポップス歌手の耐えられない軽さ」というサザンオールスターズ桑田佳祐のエッセイを読んだ。
2020年から週刊文春に連載されたコラムをまとめた書籍で、著者のこれまでの音楽人生を振り返ったり、コロナ禍で考えたことをまとめた内容であった。
この本、先日東京に出張した際に、丸の内にある丸善で偶然見つけたのだが、ちょっと立ち読みをしてみて面白そうだったので読んで見ることにした。
(ただ、本自体はKindleで購入。買って帰るには重いし、そもそもKindleで読めるものはKindleで買いたい派。とはいえ、丸善には永続的に営業を続けてほしいのので、本を買う以外で本屋にお金を払うしくみを早く考えてほしいところ。)
本の感想の前に、私が桑田佳祐ならびにサザンオールスターズをよく聴いていたころの話から。
私がサザンオールスターズを強く意識するようになったのは、中学のころで「涙のキッス」あたりから。それまでももちろんサザンオールスターズというバンドは知っていたが、親世代が聞く曲という認識でちょっと遠い存在だった。
しかし中学のころから我々の世代も聞くバンドという認識になり、ここから大学時代から社会人になったころはアルバムも買ってよく聴いていた記憶がある。アルバム「Young Love」は当時最もよく聴いたものの1つだった。
ただ、私が中学生のときに聞き出したころ、サザンオールスターズはすでにベテランの域に達していたように感じていたが、「涙のキッス」がリリースされたとき、桑田佳祐はまだ36歳で、今の自分よりだいぶ歳が下なことにちょっとショックを受けた。
さて、この本書。桑田佳祐という人は、内気でシャイで人見知りな性格なのだということがよく感じられる一冊だった。
ライブなどの見せる彼独特のパフォーマンスはその裏返しというか、照れ隠しなんだろうなと強く感じた。
本書内で、一人称を「アタシ」と表現したり、ちょっとふざけた文体にしてみたり、下ネタを交えてみたり、このあたりも照れ隠しなんだろうなと思い、あれだけの才能があり、ここまでの結果を残してきた人でも、どこか自信がないところがあって、いろいろと思い悩みながら進んできたんだろうなと、なんだか微笑ましい感じがした。
いつまで活動を続けるのかという話題では、最終的に
「これからは好きな事をやって生きる」とか「作品を作り続ける」なんて言いながら、死ぬまでクヨクヨ「去り際」に悩む方が、ずっとアタシには似合っていると思う。
とまとめているが、これなんか、キッパリと身を引いて後進に譲るべきか、できる限りファンの期待に応えようとするか、思い悩んだ末の結論なんだろうなと、その逡巡する心の中を垣間見たような気がした。
あと、このコロナ禍でさまざまな活動が制限される中、心が折れそうになることもあったが、この連載で「書く」ことによって、これまでの人生や音楽のルーツを振り返るきっかけになったり、お世話になった人のことを思い出したりすることで、自分を見つめ直し今後の活動の活力になった、とあった。
稀代のアーティストも、こうやって書くことによって、心のうちが整理でき、次につなげていることに、書くことの重要性を再認識させられた。
私自身、ここ1,2年ブログや日記を書くということを続けているが、それは間違っていないんだろうなと、勝手に勇気づけられた気がした。
そんな桑田佳祐も今年で66歳。
サザンオールスターズのライブはこれまできちんと見た覚えはない。私自身の青春の1ページを飾ってくれたバンドのライブを、(こう言っては失礼かもしれないが)彼が元気なうちに見ておきたいないと、と思った次第である。
ということで、学生時代によくサザンを聴いたことを思いだした、という話でした。