Amazonで書籍を購入するのだが、丸善がなくなってしまっては困る

もう10年以上も前の話だが、私が東京で勤め人をしていたときは丸の内や日本橋丸善に行くのが楽しみだった。休みの日やたまに早く帰れる平日などに足繁く丸善に通っていた。入口を入ると、なんだか大きな世界が広がっているような感覚(ミッキー好きな人がディズニーランドに入るときのような感覚?)すらあり、テンションが上がったことを今でもよく覚えている。もちろん書籍を買うことも多く、毎月書籍に10,000円くらい使っていたが、本を買うということ自体が目的ではなく、本屋で過ごす時間が楽しかったのである。
 
その後、地元に戻り近くにめぼしい本屋がなくなると、Amazonで紙の本を買うようになり、最近ではKindle電子書籍がほとんどになってきている。今でももちろん本屋に行くことは大好きで、東京に出張で出た際には時間をみつけては丸善に行っているが、いわゆるリアルな書店で紙の書籍を買うことはほんと稀である。
そんな私と同じく、Amazonで本を買う人が多くなり、いわゆるリアル書店の経営が難しくなってきていると言われている。最近では、名古屋市を中心に「ザ・リブレット」を展開する「大和書店」が破産したというニュースもあった。
このようなニュースを見るたびに、本屋好きの私としては、書籍自体はAmazonで買うのだが、リアルの本屋がなくなってももらっても困る、という一見矛盾する悩みというか問題意識をもつようになった。
だったら、丸善などのリアル書店で本を買えよ、と言われそうだが、例えば東京の丸善で本を買って新幹線で持って帰るのは、ただでさえ荷物が多い出張ではイヤだし、郵送するのも手続きがめんどくさい(それならAmazonでポチッとしたほうが圧倒的に便利)。
私としては、(たまにではあるが)丸善は活用させてもらっているのでなくなっては困る。だからお金を払ってもいい、と思っているのだが、書籍を買うということでお金を払うのは(荷物が増えてしまうから)イヤなのである。
 
なぜこのようなことになるのだろうかと、もっと突っ込んで考えてみると、私が丸善に感じている価値と課金のポイントがずれていることに問題があるとわかった。私は「本を買える」ということに価値は感じておらず、「本を探せる・本と出会える・本を感じることができる場所」に対して価値を感じているのに、相変わらず課金のポイントは書籍を購入するところにしかないのである。
 
そう考えると、書籍代としてでしか課金できないことが問題で、その他の方法で私(利用者)から丸善へお金を払うしくみがあればいいということになる。
では、入場料でも取ればいいと考えてしまうが、これは非現実的だろう。100円でも入場料を取ればバッシングの嵐になることは火を見るより明らかである。
(『文喫』のように入場料を取る本屋もあるが、すくなくとも文喫は本屋というよりコワーキングスペースである。スタバとかのカフェで仕事しようと思ったけど、どこも混んでて探すのがめんどくさいときに活用する、という使い方がメインだと思う。実際行ってみたこともあるが、本と出会う場として考えるのであれば、丸善のほうがよっぽどテンションが上がる)
 
ではどうすればいいか。そこで思いついたのが『レターポット』を活用するというアイデアである。
レターポットとは、キングコング西野亮廣氏が考案したウェブサービスで、ユーザーは運営会社から1文字分(1レター)5円で購入し、その購入した文字で他のユーザーに文章を送る(贈る)ことができる。送られたほうのユーザーはその文字分の文章を他のユーザーに送ることができるというしくみである(詳しくは『新世界』で紹介されている)。
新世界

新世界

 

 

これをどうやって本屋にお金を払うしくみに取り入れるかというと、丸善のような本屋が(店舗ごとでいいと思うが)レターポットのアカウントを取得してユーザーとなる。それを店舗のどこかやホームページなどで告知して、実際に本屋に行った人がレターポットでお礼を書けばいい、という流れである。

ちなみに、このレターポット。もらったレターを換金するしくみはない。それであれば、いくら私のようなユーザーが丸善のアカウントにお礼のレターを送っても丸善の経営には寄与しないように思うが、そうでもない。
レターポットは自然災害時に募金箱のようなものを設置し、ここに送られてきたレターだけは換金できるしくみになっているらしい。だから、丸善のアカウントは何か災害にあった際にこの募金箱代わりのアカウントにレターを送ることで寄付ができる。言い方は難しいが、その分実際のお金で寄付する額を節約することができ、節約できた分だけ業績に寄与することができるというわけである。
 
もし丸善がこういったことを始めてくれれば、私としては丸善に1時間くらいいれば200レター(1,000円)分くらいは送ってもいいかなと思っている。
私のように商品にお金を払いたくがないが、その場所にお金を払ってもいいと思っている人(潜在的に思っている人も含めて)はそこそこいるのではないか、と思っているのだがどうだろうか。
 
このように考えると、感じている価値と課金のポイントが異なっていることって他にもけっこうあるように思う。このあたりちょっと意識してみたい。
 
ということで、いろいろなお金のもらい方・払い方を考えると面白いのではないかと思った話でした。