世界観を守るコスト

ちょっと前のこと。
テレビで(正確にはTVerで)ガイアの夜明けを見ていたら、マーケティング専門会社である刀の特集をしていた。刀はUSJのV字回復の立役者である森岡毅氏率いる会社で、エンターテイメント業界中心で活躍している。
番組では、この刀がハウステンボスに入って改革を推し進めていたのだが、その中でせっかくのハウステンボスの世界観があるのに、それを壊してしまうようなことをしてしまっていることが紹介されていた。例えば、節電実施中の立て看板を出したり、飲食店の窓にメニューやポスターを貼り出したりなど。
ヨーロッパの街並みを作り込んでいるのに、その世界観に合っていないことを、良かれと思ってやっているのが問題だと、刀のコンサルタントが指摘して、それを止めるように指導していた。
 
事ほど左様に、世界観を統一したり、守ったりするのは大変である。
うちの会社でも、展示会に出展する際、ブースの設計に時間をかけるのだが、その際はそこに出すコピーも時間をかけて考えるし、デザインも来場者にどう思ってほしいかを考えてデザイナーに考えてもらう。
時間もお金もかけて設計するのだが、いざ当日の本番で、パンフレットが散乱したり、備品やペットボトルが置かれていたりすると、台無しになってしまう。けっこう口を酸っぱくして注意するのだが、きれいな状態を維持するのはなかなか難しかったりする。
 
他にも、最近できた地元の複合施設でのこと。この施設のオープンを伝えるためのポスターが養生テープで無造作に貼られているということがあった。建物も新しく、ポスターのデザインが良くても、その貼り方がよくないだけで、世界観というか、おしゃれな雰囲気が一気に崩れてしまうのである。
 
こういった世界観を維持するのが難しい理由は大きく2つある。
1つは管理者が、世界観を維持することの重要性に気づいていないため。
これはけっこう難しい問題で、どこかでそういう訓練を積んでいないと判断はできない。もともとわかっていない人が、わかっていない組織にいると、わからないまま育ってしまう。
きちんとした教科書があるわけでもないので、OJTがすべてになりがちである。
 
もう1つは、現場の人たちが、良かれと思って、勝手に行動をしてしまうため。
少しくらいいいだろうとか、こうやってほうが便利だしとか、世界観を守るということとは別の軸で判断をしてしまうのである。
これも1つめの理由と同じと言えば同じで、管理者がわかっていれば、注意もできるのだが、わかっていなければなんか違和感があってもそのままになってしまう。
現場の人たちも注意されないとわからないまま育ってしまうので、管理者になっても理解できていないという1つめの理由につながってしまう。
 
そんなこんなで、あちこちで世界観が崩れてしまっている現場を見ることがあるのだが、自分もそうならないように気をつけようと思った次第である。
 
ということで、世界観を守ることの重要性を理解するのは難しいし、実際に維持しようとするとそれなりのコストがかかったりする、という話でした。