引き渡し訓練という形骸化した行事

先日、娘の小学校で緊急時の引き渡し訓練なるものが行われた。
土曜の午前中に授業があって、昼前に災害があった想定で、親が迎えに行くというもの。
少なくとも私が子どものころにはなかった行事で、おそらくだが、東日本大震災を機に、こういった訓練が行われるようになったものと思われる。
 
さて、この訓練。なんの意味があるのか私にはさっぱりわからない。
私が住んでいる地域はもともと地震が少なく、津波が襲ってくる可能性も極めて低い。
可能性が低いからといって避難訓練をしなくてもいいというわけではないが、引き渡しの訓練は必要かと問われれば、いらないだろう。
 
いつもの学校に、いつもと同じ人(保護者)が迎えに来る。
仮に大きな地震が来たとしても、それをたんたんとやるだけなので、事前に訓練をしておく必要はない。
その際に、異常時児童引き取りカードなるものを持っていくのだが、親の確認が曖昧な幼稚園児とかならともかく、小学生にこんなカードを使う理由もわからない。
 
100歩譲って、こういった引き渡し訓練に意味があるとするならば、以下の2つの場合があると思う。
1つは、親以外の誰かが迎えに行くことを想定しての訓練。
災害があった際に、親がすぐに迎えにいけるとは限らない。その場合、祖父母など親とは違う人が迎えに行くことになると思うが、こういった人たちは普段学校に行かないので、引き渡しがスムーズにいかない可能性がある。そこを想定して訓練するということであれば、意味があるかもしれない。
 
もう1つは、学校以外での引き渡しを想定しての訓練。
地震津波があったという想定で、学校の外に逃げることになったとき、引き渡しがスムーズにいくように、避難訓練とあわせて実施するということであれば、理解はできる。
ただ、仮に大きな地震が来て、津波が来たとすれば、小学校であればおそらく校舎の高いところに避難することになると思われる。3階建ての校舎であれば、屋上までいけばそれだけで10m、そこに海抜を加えれば、津波からは逃げることは可能だろう。
天災があった場合に、学校以上に避難先として有効なところは思い浮かばないので、現実的には学校での避難となる。となると、学校以外での引き渡しの訓練をする意味はない。
 
そんなこんなで、学校としてもとりあえずやれと言われたからやっているのだろうし、親としてもやれと言われたからやっている、形骸化した訓練だなと思った次第。
目的をきちんと理解していないと手段は形骸化してしまう典型例のお話かと思う。
 
とはいえ、なんでこんなことやるんですか?と聞くほどひねくれてもいないので、たんたんと訓練に参加してきた、という話でした。