人口が減っていく時代のビジネス指南書~「夢と金」を読んで

西野亮廣著「夢と金」を読んだ。
この「夢と金」、著者の西野氏は、「夢」と「お金」は相反関係になく、夢をかなえるためにはお金が必要だが、これまで日本では大人が子どもたちにお金の話をきちんとせずにきたとし、希望をもつめために夢を語り、お金を学ぶ必要があるとして、この本を書いたと説明している。
 
たしかにこの点についてはそのとおりではあると思うし、大人や先生、さらには子どもたちをターゲットにしているのだろうと思うが、私としては経営者に向けた「人口が減り、市場がシュリンクする中で、生き残るためのビジネス指南書」として受け止めた。
これまでのように、安価で大量につくって販売するモデルからの転換方法をおしえてくれている、と言ってもいいだろう。
 
安価×大量のビジネスではなく、高価格×少量のビジネスモデル。しかも、この高価格×少量のビジネスモデルも、2つの方法があると説いている。
1つはお金持ちに売る、もう1つはお金持ちじゃない人に少し高く買ってもらうというもの。
 
1つめのお金持ちに買ってもらう方法。
富裕層をターゲットにして、高価格のものを、ごく少量に売るという方法。
富裕層に売るためには、富裕層の生態をきちんと理解した上で、「プレミアム」と「ラグジュアリー」の違いを知ることが大切と説明している。
 
「プレミアム」とは「競合がいる中で最上位の体験」で、「ラグジュアリー」とは「競合がいない体験」のこと
 
本書では、プレミアムとラグジュアリーをこう定義して、ラグジュアリーを目指すことを提案している。この考え方は、競争戦略論における「差別化戦略」と「ニッチ戦略」の違いに近いか。
 
富裕層が何を求めているのかをきちんと把握した上で、ラグジュアリーな商品やサービスを構築していくことが大事であるということで、本書ではその方法論を具体的な事例も交えて説明してくれている。
 
 
もう1つが、お金持ちじゃない人に少し高く買ってもらうという方法。
 
「どの商品を買っても『機能』は大体同じ」という世界線では、どの商品を買っても機能は大体同じなのだから、「誰から買うか?」という基準が力を持つ。
これまで【機能検索】だったのが、【人検索】になるわけだ。
 
機能では差がつかず、人で差がつく。そんな世界で少しでも高く買ってもらうためには、ファンとつくるべしと説いてる。
 
「顧客」というのは、「商品を買ってくれる人」のことで、「ファン」というのは、「サービス提供者を応援してくれる人」のこと
 
顧客とファンの違いをこのように定義した上で、きちんとファンをつくって、機能が同じならこの人から買おうと思ってもらえる状況をつくることが大事だということで、こちらも具体的事例を交えてわかりやすく説かれている。
 
うちの会社は、いわゆる材料を扱っており、西野氏のフィールドと比べるとかなり川上に位置しており、一見これらの説は関係ないように思えるが、参考になる点は多々あると感じた。
われわれにとっての富裕層とは誰か、ファンをつくるためにはどうしたらいいか、考えてみたいと思う。
 
ということで、「夢と金」はこれからの時代のビジネス指南書である、という話でした。