仕入れ値の値上げ分しか売値に転嫁できない会社

直近、エネルギーや資源の物価高を受けて、消費財の価格も上がってきている。
直近の値上げは、川上での昨年分の値上げが川下まで浸透してきたもので、現在も川上価格の高騰は続いており、消費財の価格の上昇は今後もしばらくは続くであろう。
 
一方で、日本の消費者は、30年続くデフレの影響で、値上げを断固拒否する習性がついてしまっている。そんな消費者からソッポを向かれては困ると、日本企業の多くはちょっとやそっとのことでは値上げに踏み切れずにいた。
 
そんな状況の中、直近の物価高を受けて、仕入れ値を売値にどう転嫁していくかは企業の今後を占う意味で大変重要な経営課題になってきているように感じているが、それぞれの企業の対応は以下の3つに分かれている。
 
1.仕入れ値の上昇分も、売値に転嫁できない会社
2.仕入れ値の上昇分しか、売値に転嫁できない会社
3.仕入れ値の上昇分以上に、売値を上げることができる会社
 
1のような会社は存在しないのではないかと思われるかもしれないが、案外多いというのが私の実感。うちの会社の客先でも、その先のお客さんに価格の転嫁ができないので、値上げは飲めないと言ってくる会社は(多数ではないが)存在する。
では、こういう会社はどうなるか。客先が値上げを許容してくれないから、仕入れ値を抑えようとするが、すると供給先から売ってもらえなくなる。
これまでは買い手が強い商慣習だったので、それが今でも続いていると錯覚しているようだが、少なくともB2Bではそうではなくなっている。これまでの仕入先が値上げするのであれば、他の会社から買えばいいやと思うのだが、そちらでも値上げである。少しでも安いところから買おうとするのだが、売り手も安くはできないので、徐々に仕入れが難しくなってくる。
仕入れ値を抑えて、売値をキープしようという試みは早晩うまくいかなくなり、ジリ貧になるのは目に見えている。
 
では、2のような会社はどうか。1の会社よりマシに見えるが、これはこれで問題がある。
最近の物価高を受けて、仕入れ値の上昇分については売値に転嫁しても受けいれてもらえやすくなっている。
しかし、仕入れ値分しか転嫁できなければ、人件費(=従業員の給料)は上げることができないので、インフレ傾向が加速すると、従業員の実質的な給与は下がることになる。
加えて、設備が老朽化しても新たに更新することもできないので、事業の存続が立ち行かなく可能性もある。
仕入れ値分だけしか、売値に転嫁できない会社もジリ貧になってしまうでのある。
 
となると3しか道は残されていないのだが、これが言うは易く行うは難しである。
うちの会社も現状は2で、営業マンは仕入れ値の上昇分だけを転嫁するだけで精一杯と思っている。でも、それは上述のようにジリ貧になってしまうので、仕入れ値分の値上げでは足りないことをしっかり認識してもらう必要がある。
加えて、経営者としては3のように余裕をもった値上げができる事業を構築していかないといけない。なかなかの難題だが、ここから逃げずに真剣に考え続けたいと思った次第である。
 
ということで、仕入れ値分だけの値上げのではジリ貧になる、という話でした。