人事の要諦

最近、うちの会社の人事(管理職の登用)でいろいろとあった。
いい機会なので、このあたりの考え方や準備しておくことについて、自分なりの考えをまとめておこうと思う。
 
まずは、考え方から。
人事というのは、ベストと考えた選択肢で決めるんだ、という腹づもりをもって挑むことが大事。この人がダメなら他でもいいやと思っていたらうまくいかない。とくにすんなりいかないと思われるケースではしっかり準備をしてから打診する必要がある。
誰を登用するかについては、必要最低限、必要十分なメンバーで選定する。ときに一人で決めないといけないこともあるし、相談して決めたほうがいい場合もあるが、どちらにしろ必要以上の人に相談して決めてはならない。
そしてそれらの人事情報はきちんと統制する。軽々しく外に出さない。当たり前のように見えて、これがけっこうできないことが多い。
 
続いて手順について。あるポジションに空きが出たという想定で話を進める。
まずは、1番手を選定する。
誰を登用すべきか考えるのだが、このとき意中の人物が思い浮かんだとしても、決め打ちせず、できるだけ複数人の候補を挙げて評価し選定するというプロセスが大事。
人事というのは、現時点のことも考えないといけないが、今回の人事が数年後にどうのような影響を与えるかまで想定しておかないといけない。よって、数年後先を睨んでベストかどうかという視点も必要になる。
そういった視点で選定するためには、いったん引きの視点で候補を複数挙げて、多面的に評価していく必要がある。評価項目を挙げて、○×などをつけて評価していくことになる。その際、ある程度年功的なことも考慮しないといけないかもしれない。例えば、さらに次のポジションが狙える人材であれば早めの登用もあるが、そのポジションがその人にとっていわゆる「上がり」であるなら、あまり早すぎるのはよくない。年齢も評価のポイントになる。
 
次に、2番手(ときには3番手も)を想定しておく。
1番手を決めるだけでなく、2番手以下も想定しておかないといけない。1番手の人材がなんらかの理由で辞退したときの次善の策を考えておく必要がある。
あくまでも、ベストと考えた1番手の候補で決めるという覚悟が必要で、2番手がいるから1番手が断ってもいいやといった気持ちではダメだが、だからといって2番手以下を想定しておくことを否定してはいけない。
また、2番手まで想定しておくことで、1番手を説得する上で余裕ができるというメリットもある。人材の登用というのは一種の交渉のようなものだから、余裕をもって臨むかどうかで結果が大きく変わってくる。
さらには、2番手以下を想定することで、今後の人事について考えるきっかけにもなる。今回の人事では登用は見送るが、次回にはそのポジションについてほしいといった評価をする人材がいたとして、将来に向けて、教育や新たな仕事与えるきっかけになったりするのである。
何にせよ、決め打ちではなく、複数の候補からいろいろと評価して決めることで、自然と2番手以下の候補も浮かび上がってくるはずである。
 
以上を踏まえた上で、1番手に打診する準備をする。
ここまで決まっても、すぐに声をかけてはいけない。準備が必要である。ここでいう準備とは2つ。
 
1つ目は、なぜあなたでないとダメなのかその理由を言語化して伝えられるようしておくこと。
打診した結果、快諾してもらえるとは限らない。その際は、説得しないといけないのだが、その際にこのなぜあなたではないとダメかという説明が必要になる。
人は他人から必要とされて、いやな気持ちになることは(めったに)ない。その理由をきちんと伝えることができれば、役割を担ってもらえる可能性が大きくなるのである。
 
これは、すぐに快諾してもらえることが予想される場合でも考えておく必要がある。
なぜこの仕事を任せたいかということは、実際にその仕事がはじまってしまうと伝える機会はなかなかない。打診するときがそのことを伝える絶好の、そして最後の機会になるかもしれないのである。そういった点からも、きちんとその人でないとダメである理由を言語化しておく必要があると考える。
 
もう1つの準備は、想定される質問の回答を準備しておくこと。
とくに説得が難航しそうなときに必要である。
断られたときに、はいそうですか、というわけにいかない。きちんと想定される質問に対する回答を準備して、こちらの本気度を示す必要がある。
また逆にこちら側から候補者が懸念していることを聞き出す必要があるかもしれない。
そういった準備をきちんとして臨むことで、引き受けてももらう可能性を少しでも高めておくことが大事である。
 
とここまで準備をして、やっと本人に打診をするという流れになる。
気持ちをブラさず、臨むことが大事になる。
結果として、そのまますんなり受けてくれればいいが、そうではないことも多々ある。納得できる理由で断られたのであれば、次にいくしかない。
 
人事というのは、役職や仕事をその人に任せることになるので、部下の登用は責任者にとって最重要事項である。
そんなことは責任者には当たり前に認識しておいてほしいところだが、案外理解できていないのかもしれないということがわかった。
それであれば、まずはそのことを、責任者に理解させることが私の仕事なのかもしれないと思った、という話でした。