地下鉄がある都市、路面電車がある都市

先日、出張で訪れた鹿児島について若干disるような記事を書いたのだが、鹿児島のように路面電車が走っている都市は、全般的に発展が鈍いような気がする。
一方で、路面電車ではなく、地下鉄が走っている都市は、ビル建設などの投資も多く、人口減少時代にあっても多くの人を惹きつけており、両者の差は広がる一方であるという印象がある。
 
これは多分に感覚的なものなので、実際にどういう都市で地下鉄や路面電車が走っているのか調べてみた。
 
地下鉄が走っている都市
札幌(196)
仙台(109)
東京(23区)(964)
横浜(376)
名古屋(232)
京都(145)
大阪(275)
神戸(151)
福岡(160)
 
路面電車が走っている都市
札幌(196)
函館(25)
富山(41)
高岡(17)
福井(26)
豊橋(37)
大津(34)
堺(82)
岡山(72)
広島(120)
松山(51)
高知(33)
長崎(40)
熊本(74)
鹿児島(59)
 
※()の数字は人口(万人)(Wikipedia調べ)
埼玉高速鉄道線りんかい線、京葉高速線、北総線みなとみらい線アストラムラインも地下鉄の区分に入るようだが、 市内(域内)全域をカバーするような路線ではないので、ここでは含めず
都電荒川線、東急世田谷線嵐山線Wikipediaには路面電車として掲載されていたが、市内全域をカバーするような路線ではないので、ここでは含めず
 
こうやって見てみると、地下鉄がある都市はすべて100万人都市で、投資されるべくして地下鉄整備がなされたとわかる。
それに対して、路面電車が走っている都市は、地下鉄も走っている札幌を除くと、広島以外はすべて100万人未満。
ちなみに、100万人都市で地下鉄がないのが、川崎市さいたま市広島市。川崎はJRはじめ多くの路線が走っているし、さいたまも同様(ここでは「地下鉄」に含めなかった埼玉高速鉄道線もある)。広島だけが路面電車がある。
 
これを見ると、背景人口の差によって、地下鉄整備がなされた都市と、地下鉄ができずにそのまま路面電車が残った都市に分かれたのであろう。
地下鉄整備の投資がなされなかったということ(≒路面電車の存続)は、背景人口という原因の結果であって、逆ではないと見るのが一般的であると思われる。
 
ただ、一方で、路面電車が残ったことで、都市発展の妨げになっている側面もあるように思える。路面電車の存続が、都市発展の成否の原因になっているという見方である。
 
その理由としては、線路が固定化され自動車用道路の幅が狭くなり渋滞が起きる可能性が大きくなる、輸送量がそれほど多くない、スピードが遅くまた時間のバラつきもある、などが挙げられる。
これらの理由によって、ある程度の都市がさらにもう一段階発展していくときの阻害要因になっているという側面が大きいのではないかと感じたということである。
 
その典型は広島だろう。
路面電車が残ったこと(地下鉄整備への投資がなされなかったこと)で、さらなる都市への発展のポテンシャルを奪っていると感じる。
例えば、駅前の一等地に路面電車の停車駅があるが、これが地下鉄であれば、その土地に高層ビルを建設することもできる。
また、地下鉄があれば、輸送力も一段アップが望め、大企業の誘致などももっと有利に働いただろう。
 
ちょっと調べてみたら、昔広島でも地下鉄整備が検討されていた時代があったとのこと。
それまで赤字で渋滞の原因になっていた路面電車が、地下鉄計画が出たころから盛り返したことによって、もともと地盤の弱い土地で多額の投資が必要だった地下鉄整備の意義が弱まり、計画は止まってしまったとのことだった。
しかし、これは今思えば、現状維持の圧力に屈してしまったと見ることができる。
地下鉄整備がなされていれば、さらなる発展が望めたのではないかと感じるのは私だけだろうか。
 
また、地下鉄を整備するような人口でなくても、路面電車がすでにその役割を終えているような都市もあるように思う。
その典型が鹿児島で、この間行ってみて、正直バスで十分代替できると感じた。
路面電車が存続する意義はもうほとんどないように思うのだが、実態としてはどうなのだろうか?
  
以上のように、路面電車が都市発展の妨げになっているという側面もあるのではないかという仮説を思いついたわけだが、今後路面電車のある都市に行くことがあったら、この仮説が正しそうかどうか確認してみたい(もちろん証明することはできないが)。
 
ということで、個人的には路面電車のある都市も風情があって嫌いではないのだが、地下鉄のある都市はどうにも大きな格差があると感じた、という話でした。