「男女同権」とは言うけれど

少し古い話題となってしまったが、東京オリンピックパラリンピック実行委員会の森喜朗委員長が辞任し、橋本聖子氏が新委員長に就任した。
 
森委員長の辞任の理由は、言わずとしれたことだが、女性蔑視発言が問題視されてのことだった。
この森氏の発言の是非について、ここでは言及しないが、基本的に森氏を擁護するような意見はほとんど聞かない。
 
一方で、橋本新委員長の過去のセクハラ問題も取り沙汰されているが、こちらは大きく意見が分かれている。
1つは、男性であろうが女性であろうが、セクハラは問題である(よって橋本氏の委員長就任はいかがなものか)という意見。
もう1つは、女性から男性へのハグやキスの強要は大きな問題ではないという意見。
 
この2つの意見を見ていると、「男女同権」という言葉には2つの意味があることがわかる。
A. 1つは、文字通り男女によって差はなく、よって権利も同じなのであるという考え方。
B. もう1つは、女性は男性より弱い存在なので、それを少しでも同じように近づける必要がある、という考え方。
 
森氏の発言については、このどちらの意味に照らしても、問題であるということから擁護するような意見がないのであろう。
しかし、橋本氏の行為については、どちらの立場を取るかによって、非難されることもあれば、正当化もされることもある。
Aの意味から見れば、橋本氏の行為はあり得ないことであり、当然避難されるが、Bの視点から見れば、女性は男性よりも弱い立場であるという前提に立つので、少々抱きつこうがキスしようが、それくらいのことは問題ないとなる。
 
大浴場などで、女性が男性用の備品の準備や掃除をすることがある。
当然のことながら、逆に男性が女性用の大浴場で同じことをしたら大問題になるが、女性が男性用に入って仕事するということは、今でもしばしば見受けられる。
これはAの意見から見るのであれば、男性が女性用に入って仕事をするのがダメならば、女性が男性用に入って仕事するのもダメということになるが、Bの意見から見るのであれば、とくに問題はないということになる。
 
余談だが、今からの20年以上前に、大学の同級生(男)が、男性トイレを女性が掃除するのは気になる、と言っていたのを覚えている。
私は正直どちらでもいいと思ったし、今でも(掃除する女性が嫌でないのであれば)どっちでもいいと思うのだが、この同級生の意見は今思えば随分先進的な意見だったと思う。
 
話を戻すと、男性から女性へのセクハラは今や完全にアウトだが、女性から男性へに関しては、まだ世間的には意見は一致していないように思う。
おそらく今後はBのような意見から、よりAのような意見に寄っていくのだと思われるが、これが(とくに女性にとって)いいことなのか悪いことなのかはわからない。
 
ただ、意見を言うのであれば、自分はどちらの立場なのかは明確にしたほうがいい。たまに都合よく、そのときどきで立場を使い分けて意見している人がいるが、それはフェアではないと思う。
 
ということで、自分も意見を言うのであれば、どちらの立場なのかは明確するよう、意識したい、という話でした。