「新型コロナとワクチン 知らないと不都合な事実」を読んで、新たに理解できたことをまとめておく(ワクチン編)

前回に続いて、「新型コロナとワクチン 知らないと不都合な事実」を読んで、新たに理解できたことをまとめておきたい。今回はワクチン編。
「新型コロナとワクチン」というタイトルからわかるとおり、本書のおいてワクチンは中心的な項目となっており、3章分の紙幅を使って説明されている。
 
基本的ところから専門的なところまでかなり広く学ぶことができると思うが、正直専門的過ぎて難しいなと思うところも少なくなかった。とくに免疫系の話(第4章後半)は難しかったので、そう感じる人は飛ばしてしまってもいいと思う。
 
以下では、私自身が新たに理解できたことをまとめておきたいと思う。
 

ワクチンの種類

まず1つめはワクチンの種類について。
 
従来からあるオーソドックスなワクチンとしては、以下の3つの種類があるとのこと。
・生ワクチン:ウイルスを弱毒化したもの
・不活化ワクチン:ウイルスをホルマリン漬けにして殺して、成分をきれいに精製したもの。免疫系の反応が若干弱い。
・組換えワクチン(成分ワクチン):ウイルスの成分の1つだけ人工的につくったもの。免疫系の反応が若干弱い。
 
これに加え、遺伝子工学からのアイデアで、ウイルスの成分のタンパク質の設計図にあたるものを打ち込み、ヒトの体内でタンパク質を作らせるという発想のワクチンが出てきている。
それが次の2種類
・ウイルスベクターワクチン:遺伝子操作などで自己複製能力と増殖力を失わせたウイルスに、患者に欠落している遺伝子を組み込んで、体内で増やそうする考え方のワクチン
核酸ワクチン:遺伝子の設計図であるDNAやRNAといった核酸を身体に打ち込むワクチンで、この設計図をもとに細胞内にタンパク質を作らせ、それでウイルスの成分をつくる(DNAワクチン、mRNAワクチン)
 
現在、新型コロナウイルス用のウイルスとして急ピッチで開発されているのは、後者の遺伝子工学のアイデアからつくられたワクチンのほうで、アメリカやイギリスで接種が開始されているのもこちら。
これらのワクチンは、開発のスピードや生産の容易さというメリットがあり、効果も理論上はあることまではわかっている。
ただ、まだ人間に打った場合どうなるかはわからないとのことが多く、副反応が起きる可能性はあるし、また10年後にどういった影響があるかといった長期間な予後がわからないとも言われいる。
 
従来からのオーソドックスなワクチンも平行して開発されているが、こちらは開発スピードが少しゆっくりで、販売が開始されるのは今年の夏か秋ごろ。
安全性や副反応については概ね予測ができるという。
 

ワクチンの有効性の考え方

ワクチンの有効性に関して、「90%を超える有効性が示された」などという報道があるが、これは新型コロナのワクチンを打った人の90%は罹らないわけでも、打った人の感染確率が90%減ったということでないとのこと。
この90%の意味は、このワクチンを打った集団と打っていない集団を比べて、コロナに罹った人の数を比較し、打って罹った人の数が、打たずに罹った人の数よりも90%低いということである。
この本で紹介されていたはテストは、40000人の人を半分に分けて、半分にはワクチンを接種してもらい、もう半分は接種しない(厳密にはブラセボ群)で普通に生活してもらい、新型コロナに感染した人の数を数えたら、接種したほうが8人、接種しなかったほうが86人だったということ。接種することで約90%の感染する人が減ったという意味での「90%を超える有効性」だということ。
確率に関しては、分母が何で、分子が何かをしっかり理解する必要があるなと、改めて感じた。
 

ワクチンの効果の考え方

ワクチンの効果は、感染の予防(感染予防効果)と症状の悪化の抑制(重症化予防効果)の2つがある。
この観点で見ると、ワクチンは効果の程度によって、以下のように区分できる。
 
・ウイルスが体の細胞に入り込むのを防ぐワクチン:HPVワクチン
・多少は感染するけど発症させないワクチン:麻疹や天然痘のワクチン
・感染もするし発症もするけど重症化を防ぐワクチン:インフルエンザワクチン
 
一般的に呼吸器感染症のワクチンは効きにくいようで、インフルエンザワクチンで感染を予防できる効果は3割程度。
どちらかというと重症化を防ぐことが目的のワクチンであるらしい。
よくインフルエンザワクチンを打ったのにインフルエンザに罹ったら、打っても意味がないといったことを言う人がいるが、これは誤りということになる。
また、重症化する人が減れば、その分他に感染させる可能性も少なくなるので、マクロで見れば感染予防という意味でも十分意味はある。
 
さらに、ワクチンの効果については、「免疫の記憶」がどのくらいの期間続くかという問題もある。
麻疹や百日咳は、ワクチンを打てばほぼ一生続くらしいが、インフルエンザは数ヶ月でその効果が消えてしまう。
 
 
以上、これから日本でも始まるであろうワクチン接種を前に、基本的なことから専門的なことまで広く学ぶことができた。日本で接種されるワクチンの種類はどんなものか、それは感染予防と重症化予防のどちらに効果があるのか、またどのくらい効果が続くのかなどなど、今回学んだ知識をつかって、情報を集めていきたいと思う。
 
ということで、まだまだ知らないことは多いなということを思い知らせてくれた良書のご紹介でした。