蔦屋図書館とスターバックスが提供する、本に囲まれた空間という価値

今から約2年半前に、うちの地元にできた、TSUTAYAが運営する駅直結の図書館。
できる前は、他にもきちんとした図書館があるのにそんなものが必要か!?と、どちらかというと反対の意見のほうが多かったような気がする。
私自身、正直そんなに関心をもっていなかった。
 
しかし、実際できてみると、なかなかの賑わいを見せており、時折イベントなども開催され、ずっと低迷していた駅前に活気が出てきている。
本に囲まれているということもあってか、いわゆる柄が悪い人も少なく、そこそこ賑やかなのだけどうるさくない空間が生まれている。
厳し目に見ても、この図書館の設立は成功と言えるのではないかと思う。
 
この図書館、いわゆる図書館機能だけでなく、半分は蔦屋書店になっており、借りることができる本が半分、買うことができる本がいったところ。
そこにスターバックスが入っており、本に囲まれてコーヒー飲みながらゆっくり過ごすことができる。
当初関心のなかった私も、すっかりヘビーユーザーである。
 
さて、あるときこの図書館が提供している価値とは何なんだろうと考えたのだが、結論しては「本に囲まれた空間」だと気づいた。
 
本当は図書館であっても、本屋であっても、どっちでもいいのである。
実際、都市部では蔦屋書店とスターバックスという組み合わせで、同様の空間を演出している。
ただ、地方では本屋一本で営業するのは厳しいので、図書館という体裁をとって、行政からの一定の額のお金を入れているらしい。
これがTSUTAYAが考えた「図書館」というスキームなのであろう。
行政にとってはこれまでの商業施設とは違い、TSUTAYAのノウハウを活用して(品のある)にぎわいをつくり出し、市民に治安のよい集いの場を提供している。
もちろんTSUTAYAとしてはビジネスとして意味があり(ここで実際に利益を出しているのかは知らないが)、ということで三方にとっていいスキームであると実感している。
 
そして、この空間は、これまでの本屋とは一線を画している。
前の記事でも書いたが、新しい書籍に触れ、まだまだ読めていない本がたくさんあることを実感できるという価値においては、この図書館や他の蔦屋書店よりも断然丸善のほうがいい。
でも、ゆっくり本を読んだり、作業するという価値においては、丸善よりもこの図書館や蔦屋書店のほうを選ぶ。
同じ本屋であっても、提供している価値がまったく違うのである。
 
実際、東京に出張するときも、これまでは東京に行ったほうが何でも揃っているので、早めに東京に入って、丸善に行ってぶらぶらしていたのだが、何か済ませておかないといけない作業があるときなどは、逆に1時間くらい新幹線の乗るのを遅らせて、この地元の駅前図書館で作業を終わらせてから東京に向かうようになった。
東京だと作業スペースを探すのに時間がかかるが、地元の駅前図書館だとだいたい席は確保できるし、本に囲まれている空間は作業が捗るのである。
東京にも、蔦屋書店は各所にあるが、どこも混んでて席を確保できるかどうかあやしい。そこは地方の優位性だと思っている。
 
とこんな感じで、私自身日々この図書館を活用しているのだが、私の子どもにも小さいから本に囲まれている空間に触れさせたいと思っている。そして、同じように考える親も多いのではないかと思っている。
まだ開業して間もないが、これが10年20年と経ったとき、地元がどう変わっているのか、今後もウォッチしてみたいと思う。
 
ということで、同じように本がある場所でも、提供している価値は大きく異なる、という話でした。