ウイルス感染の原則論を、素人が因数分解して整理してみる

前の記事で、業態別に新型コロナウイルスの対策の考え方をまとめてみたが、ここではさらにウイルス感染の原則論を整理してみたいと思う。
(注:素人が、一般的に得られる情報から、論理的に考えればこうなるだろう、まとめです)

chikaran.hatenablog.com

 

感染と発症

まず「感染」と「発症」という言葉の定義をしておきたい。
 
・感染:ウイルスが体内に入り込み、増えること
※裏を返せば、ウイルスが体内に入ってきても、すぐに減少してなくなってしまう場合は、感染とは言わないということであろう。
・発症:ウイルスがある一定以上に増えて、身体に異常が生じること
 
よく、感染と発症を区別せずに発言している人がいるが、これは明確に分けておいたがいいと思う。
子どもは感染しない(感染しにくい)といった発言が見られるが、感染はするが発症しにくいというのがより正確であろう。
 

感染・発症に関わる2つのパラメータ

言葉の定義から考えると、感染・発症するというのは、ウイルスの数が大きく関わってくるということがわかる。
まずは、ウイルスが体内に入ってきたして、それが増えるような状況になれば感染したということになり、さらに一定以上数に増えると発症するということになる。
そう考えると、このウイルス量のパラメータは次の2つに集約できるのではないだろうか。
 
・最初に入ってきたウイルス量
・そのウイルスの増減(≒ウイルスが入ってきた人の体調)
 
ウイルスは体内に入って細胞の中に入りこみ、その細胞が分裂することで増殖する。
最初に入ってきたウイルス量が少なければ、増殖する前に撃退できる可能性が高くなるが、これが多ければ増殖する可能性が高まる。
よって、最初に入ってくるウイルス量は、感染・発症するかどうかに大きな影響を与えると考えることができる。
 
一方で、ウイルスが入ってきた人の体調も、感染・発症に大きく関わってくると考えられる(免疫力といってもいいのかもしれないが、この言葉はより専門的な知識が求められそうなのでここでは使わないことにする)。
同じ量のウイルスが体内に入ったとしても、健康な若者であればすぐに撃退して、感染・発症を防ぐことができるかもしれないが、疾患のある高齢者であれば、すぐにウイルスは増殖してしまい、発症してしまうかもしれない。
また、同じ人であっても、体調の良いときとすぐれないときでは、ウイルスの増殖の推移は変わってくるであろう。普通の風邪も、無理が続いたときなどに罹りやすいが、それと同じである。
 
こう考えると、われわれの取れる対策は、体内に入ってくるウイルス量をできるだけ少なくすることと、体調を整えておくことの2つが大きいということになる。
体調を整えておくということは、健康的な食事、十分な睡眠、ストレスを溜めないなどいろいろとあるので、ここではこのあたりにして、「最初に入ってくるウイルス量」についてはもう少し細かく見てみたい。
 

感染ルートと「最初に入ってくるウイルス量」のパラメータ

ここでまず、感染ルートについて確認しておきたい。
新型コロナウイルスの感染ルートは「飛沫感染」と「接触感染」がほとんどで、その中でも飛沫感染がメインで、接触感染はそれほどでもないと言われている。
これは少し考えればわかることで、接触感染は感染者から出た飛沫が落ちて、それに触れてかつその手で口や鼻のまわりをさわることによって起こるため、飛沫が落ちた先のウイルスは徐々に減っていくし、手でウイルスを触る、その手で口を触る、さらに体内に入る、というプロセスを経なければならず、よほど症状が強い人がくしゃみや咳を撒き散らさない限り、多くのウイルスが接触感染で体内に入ってくるとは考えにくい。
よって、直接飛沫が入ってくる飛沫感染と比べると、接触感染は少ないのではないかと考えられる。
空気感染の可能性もゼロではないみたいだが、今のところ、飛沫感染接触感染と比べると少ないと考えておいてよいのではないだろうか(個人的解釈で根拠はありません、あしからず)。
 
ここを踏まえた上で、最初に入ってくるウイルスの量のパラメータを考えてみたい。
 
接触感染の場合
・触れるウイルス量
・口や鼻を手で触る回数
・手洗い・アルコール消毒の回数(さらにはうがいの回数)
 
上記のとおり、接触感染のリスクは、飛沫感染に比べると大きくないので、必要以上に気にする必要はないと思われる。
巷で言われているとおり、手洗い・アルコール消毒をこまめにすることが大事であると考える。
 
飛沫感染の場合
・感染者から発せられる単位時間あたりのウイルス量
・感染者との距離
・感染者と接触(会話)している時間
・感染している人の数
 
飛沫感染はウイルスが含まれている唾液や鼻水を吸い込むことで感染するが、この飛沫は比較的重いので、くしゃみや咳をしてもすぐに落ちてしまい、距離が離れていれば感染者から他の人まで辿りつかない。ソーシャルディスタンスなどと言われているのも、このことからきている。
 
また、これも当然のことだが、感染している人と話す時間が短ければ、入ってくるウイルス量を下げることができる。
 
さらには、感染している人が多ければ、それだけ感染の可能性は高まるだろう。ある場所に感染者が1人よりは2人いたほうが別の人に感染させる可能性は高くなるのは間違いない。よって、参加人数を絞ることで、感染リスクを下げることができる。
 
ここまでは直感的に理解できるのだが、難しいのは、感染者から発せられる単位時間あたりのウイルス量だと思う。
新型コロナウイルスが怖いのは、感染しているが発症していない、無症状感染者が一定数以上いるということに起因している。このことが、無症状感染者もウイルスを撒き散らしているような感覚に陥るが、少し考えてみれば、そうではないと理解できると思う。
 

有症状感染者と無症状感染者

ここで、感染者を発症している人と発症していない人に分けてみたい。
・発症している(有症状感染者)
・発症していない(無症状感染者)
 
感染者から発せられる単位時間あたりのウイルス量は、発症している人(有症状感染者)であれば、くしゃみをしたり、咳き込んだりするから当然多くなる。それこそ撒き散らすという感じであろう。
一方で、感染しているが発症していない無症状感染者は、その言葉の定義から、咳込んだりくしゃみをしたりしないので、普通の会話で発生する飛沫しか出ない。よって、発症している人に比べると、発せられるウイルス量は少ないといえる。
 
そう考えると、例え無症状感染者がいたとしても、長時間・短距離で(さらにはマスクなしで)会話をしなければ、最初に入ってくるウイルス量はそれほど多くならず、したがって感染しにくいと考えられる。
逆に、無症状感染者がいたとして、長時間・短距離で(しかもマスクなし)で会話をすれば、感染の可能性は高くなる。
 

結局、どういう対応をすればいいのか

以上を踏まえると、まずは熱がある人、咳き込んでいる人は、新型コロナウイルスに感染している可能性が高いので、休む・参加させないが大前提となる。会社においても、こういう人は休む、休ませるを徹底する。
そして、発症者は(休んでいるので)いないという前提に立てば、感染が起こるのは無症状の感染者からのみとなり、近距離で長時間(マスクなしで)会話をしなければ、入ってくるウイルス量も少なく、感染しにくいということになる。
 
ここで、こういう近距離で長時間会話するシチュエーションは想像してみると、以下のツイートにあるように、実はそれほど多くなくて、「飲み会」と「家族の会話」がほとんどになると思われる。この飲み会も、人数を制限して、時間を短くすれば、当然のことだが、感染の可能性は低くなる。

 
また、オフィスや工場など、会社においては実はこういった、近距離・長時間の会話の場面はほとんどない。それでも可能性があるのは、「会議」と「昼食」くらいであろう(これも飲み会や家族の会話に比べるとリスクは低い)。
 
 
以上のように、ウイルス感染の原則論を理解しておけば、対策すべきことは絞ることができると思う。ニュースやまわりの行動を見ていると、感染防止にそれほど役には立たないけど、みんながやっているということが多くあるが、必要ないことまでやって疲弊する必要はないのでないだろうか。
 
ということで、必要な対策をきちんとできていれば、感染の8割がたは防ぐことができるのではないだろうか、と思ったという話でした。