定年は引退なのかFAなのか

最近、大企業では定年を60歳から65歳に延長するというニュースをよく聞くのだが、先日とある大企業の部長の方と話をしていて、「定年延長は、マラソンでもうすぐゴールだと思っていたのに、あと5km先がゴールですと言われるようなもの」といったようなことを言われていた。
一般的に、定年は遅いほうがいいものだ、と思われているようだが、上記の部長のように必ずしもみんなが喜んでいるようではないようである。
 
うちの会社はまだ定年60歳なのだが、その後も契約社員として65歳、さらには嘱託社員として70歳まで働いてもらうというケースが増えている。
そろそろ組合側から定年延長の要望が出てきそうな雰囲気になってきているのだが、そういった話が出るたびに、定年とはなんだろうと考えることが多くなった。
 
うちの会社では年に2度ほど定年退職式をやっているのだが、その際の挨拶で私は「定年は引退ではなく、FA制度のようなもの」と話している。
一昔前は、定年とはキャリアのゴールで、引退という意味合いが強かったと思う。
しかしながら、年金の受給開始も遅くなり、そして何よりみんな元気であるということもあり、定年以降も働く人が増えている。増えているというよりほとんどがそうなのではないだろか。上述のとおり、うちの会社でも定年後も働いてくれる人は多い。
そう考えると、定年とはプロ野球でいうところのFAを取得するようなものであり、そのまま同じ会社で契約し続ける人もいれば、違う会社にいったり、いったん仕事を辞める人もいるが、どちらにしろ一区切りのようなもので位置づけにあると思う。
 
ただ現実的には、60歳でFAの権利を取得!となっても、キャリアを大きく変えるのは難しい。よって、一般的にはそのまま同じ会社で65歳とか70歳くらいまで働くか、これまでの経験を活かして同じような仕事を探すか、もしくはあまり経験必要としないような仕事を見つけるか、くらいしか選択肢はないということになる。
 
そのような中、今多く企業(中小企業でも)では組合から定年を延長してほしいという要望が出ている。
しかしながら、私は定年を延長することが必ずしも働く人の幸せにつながらないのではないかと思っている。
 
この組合の要望と私の感覚の違いは、まさに定年をどう捉えるかの違いからきている。
定年を引退と捉えるのであれば、寿命が伸び、かつ少子高齢化で年金の受給開始が遅くなるとなれば、少なくともその時期までは引退は延ばしたいと考えるのは自然なことではあると思う。
一方で、定年をFAと捉えるのであれば、FA取得が遅くなるということはいいことではない。早めにFAを取得して、これまでの延長線上のキャリアを歩むか、別のキャリアを進むかを考え直すことをしたほうがいい。
東大の柳川先生が40歳定年制を提唱しているが、これはまさに定年をFAと捉えており、選択肢が限られてしまう60歳ではなく、もっと早くその時期を設定すべきという案は一考に値すると思っている。
 
これは良し悪しの話ではなく、どちらかというと好き嫌いの話なので、いろいろな意見があっていいと思う。
でも、だからこそプロ野球でもFA取得の年限を早めるよう選手会が求めているように、会社においても定年を早めるということを求める組合が1つくらいあってもいいのでは、思ったという話でした。