「努力の娯楽化」のはじめの一歩としての「努力の集中化」

「努力の娯楽化」という言葉がこのブログではよく出てくるが、これは私が尊敬する経営学者の楠木建先生が『「好き嫌い」と才能』という書籍で紹介されている考え方だ。
仕事において余人をもって代えがたい存在になるには、絶え間ない努力の投入が必要になるが、それはインセンティブ(誘因)にもとづく努力だと長続きしないので、「好き」という自分のなかから湧き上がってくるドライブ(動因)にもとづいたもののほうがいいと、楠木先生は説いている。
好きであれば、努力は継続し、そのうち人よりうまくなり、うまくなると成果が出て、ますます好きになる、というサイクルに入る。
客観的に見れば大変な努力の投入を続けているが、当の本人はそれが理屈抜きで好きなので、主観的にはまったく努力だと思っていないという状態にあるというのである。
 
この考え方をはじめて目にしたとき、これはそのとおりだし、面白い考え方だなと思った。こういったサイクルに入ると確かに強い。
しかし、次の瞬間、こういった疑問も湧き上がった。
自分の場合、本当に好きってなんだろう?と。
 
私の場合、例えば本を読むのは好きである。まわりにたくさんの本を読む人がいないので、よくそんなに読めるねと言われるが、言われた本人からすると、好きでやっているので苦ではない。
ただ、元からそうだったかというと、そういうわけでもない。学生のころまではどちらかというと読書は苦痛だったのだが、社会人になってから満員電車が苦痛で、その苦痛を和らげるために本を読み出し、それから本を読むのが苦痛ではなくなった。
他にも、考えることは好きである。ただ、これも遡れば、幼少期にはじめた公文で算数が他の人たちよりできるようになって、それから算数・数学が好きになり、自然と理屈っぽく考えることができるようになったのではないかと感じている。
 
「努力の娯楽化」とは「好き」と「できる」のサイクルに入った状態を指すが(これに「役に立つ」が加わるとより強固なサイクルになる)、楠木先生は「好き」が先にくるべきである、という論調のように感じる。しかし、必ずしもそうでなくて、「できる」が先にくることもあるのではないか、と私は考えるわけである。
「好き」だから「できる」だけでなく、「できる」から「好き」になる、「できる」がスタートでもこの「努力の娯楽化」は成り立つのではないだろうか。
 
それであれば、最初に「できる」ようになるにはどうしたらいいか。そうこう考えた結果、出てきたのが「努力の集中化」である。
今現在好きとは言えないけど、それが好きになった状態になりたいものがあれば、短期集中でやってしまうのである。長期間だと継続が難しいが、短期集中であれば根性でどうにかなるという発想である。
集中してやってみることで「できる」に変わり、そして「好き」になるかもしれない。
そして、「好き」になればさらに「できる」ようになり、このサイクルが回りだすというわけである。
 
ここで注意するのは2点。
1つは、自分で定めた短期間の集中化では、娯楽化の域にまで達しない可能性があること。
そのときは、また別の機会に集中化をやってみればいいと思う。
一度ではうまくいかないことのほうが多いと思うので、何度かやってみればいいと思うが、それでもうまくいかなかったら、それは本当は好きにはならないことだと諦めるのも一つである。
 
もう1つが、この「好き」と「できる」のサイクルがしっかりまわっていくまでは、自力で回し続けないと「努力の娯楽化」の境地には達しない、ということである。
一見うまくサイクルが回りだしたように見えても、中断してしまうとそのサイクルが途切れてしまう。だから、これは本当に好きになったと思えるまでは、やり切ってしまうことが大事であろう。
 
 
今私が「娯楽化」に挑戦しているのが、まさにこのブログ、もう少し抽象化すると「文章を書く」ということである。
上記のとおり、私は考えるのは好きでなのだが、その考えたことをまとめて文章化にするということは、できるようにはなりたいのだけど、嫌いかつ苦手であった。
2年前に一念発起ブログをはじめてみたものの、アイデアは思いついても文章にまとめるという行為が億劫で、嫌いかつ苦手から抜け出せずにいた。
とても「好き」と言える状況にはならなかったので、まずは「できる」ようになるためと、年末年始とGWに集中して毎日更新をやってみたというわけである。
 
結果、まだまだ「努力の娯楽化」と言えるところまでは来ていないが、ちょっと「できる」と「好き」のサイクルが回り始めた実感はある。
年末年始明けは、更新のペースを落としてしまったために、せっかくできつつあったこのサイクルが失速していった感があった。
今回はその反省を活かしてGW明けも更新ペースを開けずに続けていきたいと思っている。
 
ということで、早く娯楽化の段階までもっていきたいなと思っている今日のこの頃の話でした。
 
「好き嫌い」と才能

「好き嫌い」と才能

  • 作者:楠木 建
  • 発売日: 2016/04/22
  • メディア: 単行本