新型コロナウイルスにおける、専門家とビジネス層のスタンスの違いについての考察

Twitterやテレビのニュースなどを見ていて、新型コロナウイルスを取り巻く状況についての考え方やスタンスに関して、面白いことに気づいた。
一般的に、こういう社会問題を見ていると(超偏見だけど)いわゆる知識量とその反応は線形に相関すると感じているのだが、今回の新型コロナウイルスに関しては必ずしもそうなっていないように思われる。
東日本大震災に伴う、原子力発電への捉え方などは、イデオロギーで意見をしている人を除いて、専門家といわゆる知識層やビジネス層の意見は、原子力発電は稼働すべきという発言で一致していた。しかしながら、テレビからしか情報を入手しない(できない)層は、主婦層を中心に原子力発電稼働に一貫して反対していた。当然、ここがボリュームゾーンになるので、政策もこの層の意見が反映されている。ニュースも見ない層については、この問題に関心がないといったところか。
 
ところが、今回の新型コロナウイルスについては、必ずしもこの知識量とその反応が線形に相関していない。
ここでは、話を単純化させるために、A.専門家(今回の場合は医師)、B.ビジネス層、C.主婦層、D.ニュースを見ない若者層に分類して考えてみたい。
さらには、大雑把で偏見もあるが、専門家、ビジネス層、主婦層、ニュースを見ない若者層の順に知識量があるとすると、その順番で以下のような反応を(今のところ)見せている。
 
A.専門家層(医師):封じ込め、自粛
B.ビジネス層:集団免疫、自粛の緩和
C.主婦層:(怖いからとりあえず)自粛
D.ニュースを見ない若者層:自粛の緩和、無視
 
上記のとおり、一般的な社会問題は、このAからDの順番できれいに反応の違いが出るのだが、ことこの新型コロナウイルスについては、AとCが(表面上は)似たような反応、BとDが(これまた表面上は)似たような反応になっている。
少なくとも私のまわりの経営者・ビジネスマンは、3月末の状況では、過度な自粛はしないほうがいいというスタンスの人が多い。
また、いわゆるインフルエンサーであっても意見が別れていて、より医師などの専門家に意見が近い人と、過度な自粛はするなと主張する人に分かれている。
 
では、なぜビジネス層は専門家層と意見が異なってしまうのであろうか。
大きく2つの要因があるように考える。
 
1.因果関係が何段階もあるので、直接自分に関係ないことには時間を割いて理解しようとしない
 
これはビジネス層に限らないことだが、ヒトは因果関係を単純化して考えてしまう。一段階程度の因果関係であれば誰でも理解できるが、これが二段階になると普通のヒトは理解できなくなる。一段階の因果関係は直観で理解できるからである。
優秀なビジネス層であれば多少因果関係が複雑になっても理解はできる能力はあるのだが、しっかりと時間を割かないと理解できない。忙しいビジネスマンはこの新型コロナウイルスの問題にそこまで時間を割かなかった、もしくはいま現在でも時間を割いていないのである。
 
私も最初のうち(2月中旬くらいまで)は、この問題はとくに関心がなく、ニュースの内容もとくに見ていなかった。ダイヤモンド・プリンセス号のニュースも半ば意図的にスルーしてた。
ところが、この2月中旬くらいから、これはちょっと大きな問題になると思い、自分ごととしてそれから注意してニュースや論考を丁寧に読むようになった。さらにきちんと整理して管理職に伝えようと考えたので、自分の言葉で説明できるように理解に努めた。
さらにそこから、今回の新型コロナウイルスの問題において、封じ込めをしないといけないと理解・納得したのは↓の記事を読んだからであるのだが、このブログの記事とて、しっかり時間を取って、理解しようという姿勢で読まないとなかなか理解できない。
2.いわゆる指数関数的な理解が直観的にできない
上記のとおり、ただでさえ何段階もある因果関係を辿らないと全体を理解できないことに加え、その途中で指数関数的な理解が必要になってくると、ここで挫折してしまう人が多いのではないかと思っている。もしくはこの指数関数的な因果を飛ばして、静的な確率論のところまでの理解で解釈してしまっているのかもしれない。
昔、豊臣秀吉が部下に「1日目に米粒を1粒。2日目にはその倍の2粒。3日目にはその倍の4粒、4日目にはその倍の8粒。それを30日間欲しい」と言われて承諾してという話があるが、まさにいわゆる頭がいい人にも理解が難しいのである。
 
以上のような理由から、いわゆる(優秀な)ビジネス層もこの問題については、理解が遅れているように思われる。
ここでは、私が優秀だ、と自慢をしているわけではない。関心をもって理解しようと思えば理解できることである。ただ、ちょっと時間を取るかどうかの違いだと思う。
 
ということで、大事なことには時間を割こうという話でした。