「ビジョナリー・カンパニー 弾み車の法則」を読んだ。
この本は「ビジョナリー・カンパニー2」で提唱している概念を切り出し、新たな事例と同シリーズで紹介されている概念とあわせて再編集されたものである。
「ビジョナリー・カンパニー ― 時代を超える生存の原則」はかれこれ20年以上前に出た本で、それ以降「ビジョナリー・カンパニー 2 - 飛躍の法則」「ビジョナリー・カンパニー3 衰退の五段階」「ビジョナリー・カンパニー4 自分の意志で偉大になる」という4部作に、「ビジョナリーカンパニー【特別編】」と今回読んだ「ビジョナリー・カンパニー 弾み車の法則」という番外編を加えたシリーズとなっている。
「ビジョナリー・カンパニー」(第1作)は時代を超えて活躍する企業の成功の要因を事例を交えて紹介されており、当時学生だった私は(まだ読書習慣はなかったのだけど)興奮しながら読んだのを覚えている。ちなみに「ビジョナリー・カンパニー2」も大変おもしろかったが、3はイマイチで、4は読んでいない。
さて、今回読んだ「ビジョナリー・カンパニー 弾み車の法則」だが、内容自体は前述のとおり「ビジョナリー・カンパニー2」で紹介されている概念で、目新しさはない。
しかも、この本はかなり薄い。紙の書籍で96ページと、「ビジョナリー・カンパニー」の475ページ、「ビジョナリー・カンパニー2」の360ページと比べるとかなり短く、「1」の5分の1、「2」の4分の1程度しかない。それなのに、価格は1,320円ということで、Amazonのレビューでは低評価のものも多い。
私も1時間程度でさらり読めてしまい、情報として新たに学ぶものはとくにないな、と感じた。
ではこの本に価値がないか、と言えばそんなことはない。
「ビジョナリー・カンパニー」や「ビジョナリー・カンパニー2」は確かに名作だと思う。私自身この2冊に大きく影響を受け、今の自分をかたちづくっていると言っても過言ではない。
しかし、長いのである。そして紹介されている概念も多く複雑なのである。丁寧に読めば面白いし、全体の概念を理解して実践すればその破壊力はすさまじいものになると思うのだが、これを理解するのは大変な労力を費やす。ましてや、これをまわりの誰かに読ませようとすると、それはそれは難しい。
それであれば、完璧ではないけれども、この中のとくに重要な概念だけを取り出し、このように薄い書籍で紹介するのは大変意味のあることだと思うのである。
近年、書籍という媒体は情報を売っているのではないと言われている。この本も、情報ではなく行動変容を売っているのだ。
この「ビジョナリー・カンパニー 弾み車の法則」でも、重要な「弾み車」という概念だけを取り出して説明することで、自分の会社だったらどうなるだろう、と考えてみるという行動を促すことを価値としているのである。
われわれも、本もその厚さ自体に価値を感じるのではなく(もちろん厚くていい本もたくさんがあるし、包括的な概念を学ぶことは大事ではあるが)、読み切って行動に活かすことに価値を見出していかなくはならない。
そして、このくらいのボリュームの本であれば、私も自分の会社の管理職に読まさせることが可能だと思った。さっそく配って、うちの会社の「弾み車」を考えてみようと思う。
ということで、可処分時間の奪い合いが起きているこの時代、薄い本の需要というのは、ますます増えるんじゃないかなと思った話でした。