結果を出し続けるということ~「嫌われた監督」を読んで

たしか10月に東京に出張に出た際に寄った丸善でこの「嫌われた監督」の存在を知った。
はじめにの部分をちょっと読んでみて、これは間違いないやつだと、Kindleで購入(ほんとは丸善でお金を使いたいのだが、あの厚い本を買って読もうとはもうならない…)。その後、なかなか時間が取れず、少しずつ読み進めていったが、先日ようやく読了。個人的には、今年読んだ本の中で一番面白かった。
8年間の監督時代の中で、痺れるエピソードがこれでもかと紹介されており、ブレない落合監督であっても、この8年間で微妙に揺れながらそのスタイルが確立されていったことがわかり、有意義な読書体験ができた。
 
さて、この本を読んでの学びは多くあったのだが、ここでは2点まとめておきたいと思う。
 
1つは、結果を出すということが最優先事項であるということ。
プロ野球の監督であれ、会社の経営者であれ、とかく現場の人とのコミュニケーションを取ることが好まれる傾向があるような気がする。現場の言うことを聞いてくれる。社長が思っていることを伝える。それが大事なのだ、という風潮がある。
そんな中、落合は秘密主義を貫き、選手とも過度なコミュニケーションを取らない、という一般的な傾向とは逆のマネジメントスタイルで結果を出し続けた。
 
そんな落合監督のスタイルをこの本を通じて垣間見ることで、マネジメントスタイルが大事なのではなく、結果を出す、結果を出し続けることが大事なのだという、当たり前のことに気づかされた。
どんなマネジメントスタイルであっても、業績という結果がついてこなければ非難される。仮にコミュニケーションが少なかったとしても、結果が出ていればそう文句を言われることはない(落合監督の場合、マスコミからは非難を浴びたが)。
 
コミュニケーションをしっかる取るというマネジメントスタイルが、会社の業績やプロスポーツの成績になりにつながる、という側面を否定するわけではないが、一方で結果を出すことができなければそれでは意味がない。コミュニケーションをしっかり取る→良い結果、という因果関係が暗黙のうちに認識されているが、コミュニケーションの多寡は原因の1つであり、すべてではない。
穿った見方をすれば、話を聞いたり、密なコミュニケーションを取るということは、結果が出なかったときの言い訳というか、免罪符のようなものになりかねない。
あくまでも、結果を出すということが、最優先の事項であり、そのための手段としてコミュニケーションやマネジメントスタイルがあるということを再認識することができた。
裏を返せば、結果を出し続けることができれば、ある程度は独自のマネジメントスタイルも許容される、ということである。一般的に言われている良い経営者像に忠実ではなくても、結果を出し続ける、私自身そんな存在に早くなりたいと強く思った。
 
もう1つは、定点から観測するということ。
この本の中で、落合は定点から選手を見続けるというエピソードがいくつか紹介されている。筆者に対してずっと同じ位置からバッティングを観察してみろとアドバイスしたり、立浪や井端の守備を同じ位置から観察することでその衰えに気づいたという話が載っている。
翻って、会社の経営において、定点から観察し続けるとは何を意味するのだろうか、考えさせられた。
自分もダイナミックに動くものに目が移りがちになる。しかし、だからこそ定点から見続なければいけないものもあるはずである。
それは、指標のような数字なのか、現場や管理職の言動なのか、今の自分にはそれが何なのかハッキリとはわからないが、ただ今後経営をしていく中で、定点で見続けなければならないものは何なのか、意識して探していきたいと思う。
 
野球好きな私としては心動かされるエピソードがふんだんにあり、ここで挙げた他にも学びの多い本であった。
年末年始にもう1度読み返して、さらなる学びを得たいと思う。
 
ということで、継続的に読み返したい良書に出会えた、という話でした。