(おぼろげに)わかっていることを、言語化することの重要性

日本での初開催、日本代表初のベスト8など、話題には事欠かず、当初の想定以上の盛り上がりを見せた1ヶ月だった。
 
もうだいぶ前の話になるが、以前勤めていた会社には当時ラグビー部があり、同じ部署の同期や後輩が所属していたこともあり、私はよく応援に行っていた。
しかしながら、ラグビーの細かいところのルールがわからなかった。
もちろん、前に投げてはいけないとか、トライすると5点入る(ペナルティーゴールが3点、コンバージョンゴールが2点も)とか、そういった基本的なルールはわかっていたが、反則の種類とその後のスタートの方法をわからずにいた。
ボールを蹴り出したほうがラインアウトでボールを投げ入れるなど、サッカーなどと同じような感覚だとなぜそうなるのかわからないプレーや反則が多かった。
 
そこで、ラグビー部の後輩をつかまえて、今度ルール説明のプレゼンテーションのしてくれ、と頼んだのだが、その後輩は「僕もよくわかりません」と返してきやがった。ラグビー部なんだから、それくらいきちんと説明しろと言ったが、結局有耶無耶になり、その後もラグビーのルールがわからないまま過ごすことになった。
 
それからかれこれ10年以上経って、今回のワールドカップである。せっかくの機会なのでテレビで観戦するとなかなか面白いので、ここで一念発起して(というほどのことでもないが)、ルールを勉強してみた。
そうすると、反則は3つの種類(ハンドリングエラー、軽い反則、重い反則)に分けられ、それぞれでリスタートの種類が違う(正確には選択できる種類の多さが違う)ことを理解した。
細かい反則をすべて覚えたわけではないが、そういったフレーム(反則とリスタートの種類と関係性)さえ頭に出来上がれば、あとは解説を聞けばこれまで以上にゲームを楽しむことができた。
 
いったん自分でルールを勉強してみて、前の会社の後輩がルールを説明できない、と言っていた理由がよくわかった。
本人はもちろんルールを理解しているのだが(でないと、社会人のトップリーグでプレーできるはずもない)、それを言語化して人にわかりやすく説明するというのは別で、たしかにラグビーのルールを人に説明するのは難しいなと感じた。
 
なんてことをワールドカップを見ながら考えていると、今のうちの会社を取り巻く状況でも似たようなことがあるなと思った。
 
今年、うちの会社のメインの取引先が経営統合をした。
これまでのうちの会社の取引先をA社と、統合相手の会社をB社、この2つの会社が統合して新しい会社ができた。
A社出身のみなさんはうちの会社のビジネスの特徴を理解してくれていたが、B社出身の方々はわれわれの詳しい実情はわからない。
A社出身の方々は、うちの会社の特徴や強みを説明してくれているようだが、それがB社出身の方々にはなかなか伝わらないでいた。
そこにもどかしさを感じていたのだが、よくよく考えると、このラグビーのルールの話をいっしょで、A社の方々は(感覚的には)うちの会社の特徴を理解してくれているが、それを言語化して伝えるというところまでいっていなかった、ということに気づいた。
これはA社の方々が悪いということではなく、うちの会社の社員(私も含めて)も自分の会社の特徴を言語化できていないものを、他社の人たちにそれをやってもらおうというほうがおかしかったのである。
そこで、改めて社内でうちの会社の強みや特徴を整理して言語化し、A社出身・B社出身の方々に説明していくこととした。徐々にではあるが、A社出身の方々だけでなくB社出身の方々にもうちの会社の強みや特徴を理解してもらえつつあるように感じている。
 
ということで、この一見関係ない2つの事象から、なんとなくおぼろげに理解できているということと、それを人に伝えるレベルまで言語化するということの間には大きな差があるということに、改めて気付かされたという話でした。
 
 
※ちなみに、ラグビーのルールがよく理解できたのがこのサイト