雇用が流動化すると、中小企業の給与は上がる

中小企業の採用が難しくなっている、と多くの経営者が言っている。私も同じ感覚で、高卒を採用としようと思っても、大企業が数百の単位で採用して、こちらにはまわってこない。
従来の新卒・中途採用ではまかないきれないため、雇用延長などによるシニア活用や、女性の採用、また外国人技能実習制度などによる海外からの人材調達も活発になってきている。
もっとも、大変なのは中小企業だけでなく、大企業も同様で、大企業どうしの引き抜きも多いと聞く。
大企業と括っても、もちろん千差万別で、待遇も異なる。より待遇の良い企業に人材が流れてしまうのは、自然の摂理だろう。
 
人材を採用できないのであれば、より高い給与・待遇を提示して、人材確保しなければならないのだが、如何せん日本は雇用の固定化が進んでいるため、なかなかそうはならない。
裏を返せば、雇用が固定化しているから、給与を低く抑えることができているとも言える。
そう考えると、左寄りの政党のみなさんや労働組合が「雇用維持!」と叫んでくれることは、中小企業の経営者を助けるためじゃないのかとすら思えてくる。
もっとも、雇用維持を叫ぶみなさんも、全労働者の味方ではなく、あくまでも「正社員」だけの味方だけれども、それでもその正社員の方のことを考えれば、解雇規制が緩和し、雇用が流動化したほうが給与は高くなるはずだし、結果として失業率もそんなに変わらないと思う。
この人材難な売り手市場で、簡単に解雇できるようになっても、多くの経営者は解雇なんてしないし、解雇しないといけないと思う人もごくわずかなはずである。
 
また、別の視点だが、定年はFAのようなものだと感じている。日本のプロ野球のFAのように手を挙げる形式ではなく、自動でFAになるタイプのやつ。多くの人は、契約形態や給与はどうであれ雇用延長を選択し、同じ会社に残るのだが、それが60歳というタイミングでは給与は増えない。労働者側のオプションが少ないのだから仕方ない。
もしこれが、東大の柳川先生が提唱されるような40歳定年だったらどうだろうか?おそらく、この売り手市場において、引く手数多なわずかな人の給与が大幅にあがるだけではなく、(バランスを重視する日本の)給与制度上多くの人が昇給の恩恵に預かれるのではないかと思う。
 
と、以上のように合理的に考えてみると、少なくともこれからの少子化の時代、解雇しやすい社会のほうが、労働者に有利で、経営者に厳しい条件になると思うのだが、おそらく多くの人は理解してくれないし、深く考えようともしない。ファスト&スローにあるように、人間は感情を優先させて、思考のキャパシティを守るようにできているから仕方ない。