売るほうが立場の強い時代

うちの会社は鉄鋼業界に属しており、メーカーから仕入れた材料を多少加工して販売している。川上・川下という分類で言えば、だいぶ川上よりに位置している。
で、ここ数年の傾向だが、かなり売り手の力が強くなっているように感じる。
これは鉄鋼に限らず、素材全般に言えることかと思うが、原料高に加えて、企業の合従連衡や生産設備の統廃合が進み、プレイヤーも生産量も限られているため、買い手としては材料を確保するのが大変になってきており、結果として、価格も上昇傾向が続いている。
 
これは川上の素材に関してだけかというと、おそらくそんなことはなく、今後は小売にまで展開していくのではないかと思っている。
 
そして、これは一般的なモノの売買に関わらず、さまざまな契約において売り手が力を強くなっているのを感じる。
 
典型的なのは、人材。
労働力の売り手の人材とその労働力の買い手の企業。明らかに売り手の力が強くなっているのを感じる。
数年前までは、なんだかんだ言って採用できていたのが、ここ1,2年はまったく応募がないという状況が長く続く。少々条件を良くしたくらいでは、人が集まらないのである。
また採用に限らず、在籍している人材についても発言力が強くなっている。辞められたら困るので、従業員の意見が通りやすくなっている。
 
また、請負業務でもその傾向にある。
昔は元請会社と請負会社では、下請という言葉が使われる通り、完全な上下関係があった。今でもそれが完全に払拭されたわけではないが、だいぶ改善されつつあるように感じる。
元請会社があまり理不尽なことを言っていると、見限れるリスクがあるため、無理なことが言われにくくなってきている。
 
こうなっている要因は主に2つで、1つはやはり供給量が減っているということ。
上述の原料や生産設備だけでなく、人材の供給量は明らかに減ってきている。人口減に加えて、働き方も多様化しているので、昔ながらの3Kに近い職場は敬遠され、諸条件がかなり良くなければ人を集めることができなくなっている。そのため、人材自体やその人材が資本となるような請負業務ができる会社は希少になりつつあり、その分立場が強くなりつつある。
 
もう1つは、下請法や労働法などの法整備。昔ながらの、いわゆる上が下に言うことを聞かせるということが、法的にもやりにくくなってきている。
コンプライアンスの観点から、大企業はもちろんのこと、ある程度しっかりした企業であれば、法遵守の意識が高まってきており、労働者や請負会社が守られる環境が整いつつある。
 
以上のように、総じて売り手が強い時代になってきている。
この流れの変化はおそらく不可逆なものだと思うので、それ流れを意識して、振る舞うことが大事であると考える次第である。
 
ということで、あらゆる場面で売り手が強い時代になりつつある、という話でした。