人はタクシーを乗るときに、良いドライバーに当たりたいのか、悪いドライバーを引きたくないのか

タクシーを利用すると、たまに嫌なドライバーに当たり不愉快な思いをすることがある。
私もそういう経験を何度かしたことがあるが、ここ1年くらいで最も不快だったのが、地元の駅のタクシー乗り場から近距離乗ったときのことである。
初乗り料金ほどの近距離で利用したのだが、私が1万円しか持っておらず(これは私もマナーとしてはよくないのだが)、ドライバーから釣りがないと嘘をつかれて口論になるということがあった。
それ以来、急を要する場合以外はなるべく近距離のタクシーを乗らないようになってしまった。そのドライバーは自分の言動が、タクシーというサービスの市場を縮めていることにどれだけの自覚があるのだろうか、と今でも憤っている。
 
とまあ、私の愚痴はさておき、西野亮廣氏がブログでタクシーに関する記事をアップしていた。
タクシーの一番の問題はとにもかくにも「ドライバーさんの当たりハズレがある」という点ではないでしょうか?
 
と問題を設定しており、これ関しては異論なし。前述のとおり、ハズレドライバーを引いてしまったときは、思い出すたびにイライラしてしまい、数日間のコンディションにも影響を及ぼしてしまうくらいだから。
 
で、その問題に対する西野氏の解決策だが、『顔写真』と『名前』と『特技』と『誕生日』などがわかる「ドライバー検索」できる配車アプリをつくる、というものであった。
正直、この解決策にはちょっと?がついた。いつも人間の本性を衝き、神は細部に宿るを実践している西野氏にしては、粗い解決策だなと思った。
 
「当たりハズレがある」というのはそうなんだけど、もう少しツッコんで考えると、「当たり」がほしいのか、「ハズレ」を引きたくないのか、これは似て非なるものである。
私の感覚では、多くの利用者にとっては、「当たり」のドライバーがいいのではなく、「ハズレ」のドライバーが嫌なのである。
仮に良いドライバー、普通のドライバー、悪いドライバーが2:6:2の割合でいるとして、2割の良いドライバーに当たりたいのではなく(もちろん良いドライバーに当たるに越したことはないが)、2割の悪いドライバーを引かずに、上位8割の良いもしくは普通のドライバーに当たりたいのである。
 
もう少し細かいシチュエーションを考えると、仮に良いドライバーかどうか事前にわかるとして、タクシー乗り場や流しでタクシーを捕まえるときに、ちょっと時間を待ってでも(2:6:2の2割しかいない)良いドライバーを待つ、という人は少ないのではないかということである。
私の場合であれば、(急ぎ具合にもよるが)事前に評価がわかるのであれば、下位2割のドライバーでなければ乗車するだろうし、多くの人がそう考えるのではないかということである。
今すぐタクシーに乗りたいのだけど、それでも悪いドライバーに当たりたくない、というくらいが本音(人間の本性)だと思う。
多くの人にとって、タクシーが提供する価値とはあくまで「移動」であって、「車内での(ちょっと特別な)体験」ではないと私は考える。
だから、利用者が求めていないところに費用をかけてサービスを充実させるのは筋が悪いな思った次第である。
 
そう考えると、配車アプリにほしい機能は、特技や顔写真とかではなく、悪い評価とそういうドライバーをはじいてくれるしくみ(社内の評価制度など)なんだと思う。
(私は使ったことはないが)Uberでのこういった機能は実装されているらしい。それであれば、それを模倣すればいいのだろうけど、直接ドライバーを雇用しているタクシー会社としてはそこ(悪い評価の可視化)を実装するのはなかなかハードルが高いんだろうなあ、と勝手に想像している。