決断と判断

音声配信サービスVoicyで、Voicy社長の緒方憲太郎氏が「決断と判断」の違いについて言及していた。

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この配信で、緒方氏は、判断は情報収集して分析したり選択肢を評価すること、決断は決めること、と定義づけている。

言わんとすることはわかるのだが、ちょっと定義が甘いのと、この配信の内容から決断のほうが判断よりも価値の高い行為であるというニュアンスがあるのを感じ、ちょっと違和感をもったので、ここで私なりの定義を整理しておきたいと思う。

 

まず、私なりの定義は以下のとおり。

判断:情報収集や分析をすることで、自ずと選択肢が絞られて、それを選択すること

決断:いくら情報収集や分析をしても、選択肢が絞れず、最後はエイヤで選択すること

 

緒方氏との相違点は、どちらも選択することであることと、そこに優劣はないということ。判断よりも決断のほうが優れているというものではなく、単に違う行為であると考えている。

字面から考えると、判断はどれを選べばいいか判った上で他の選択肢を断つ、決断は決めることで他の選択肢を断つ、という感じか。

 

この定義に従えば、普段のくだらない選択でも決断が必要なことはよくある。例えば、飲食店でメニューを選ぶとき、あれもいいな、これもいいなと迷うときに、最後にこれ!と選ぶのは決断になる。しかしながら、500円と1000円のメニューがあって、今700円しかもっていなかったら、500円しか選べないから、これは判断となる。

重要な局面では決断が必要で、そうでない場面は判断でよい、ということではなく、重要な決断もあれば、重要な判断もあり、割とどうでもいい決断もあれば、どうでもいい判断もある、というだけである。

 

で、この決断と判断の話のときに、情報収集や分析ばかりしていないで、ある程度のところで決断しないといけないことがある、と言われる。今回の緒方氏の言いたいことも概ねそんな感じで、このこと自体にとくに異論はない。

ただ、うちの会社での意思決定なんかを見ていると、本来であれば判断できる案件なのに、情報収集や仮説の立て方が甘く、エイヤで選択してしまっていることがある。また、情報収集や分析をしないまま、どの選択肢にしましょうか、と経営者である私に聞かれたりすることがよくある。

 

こう言うと、うちの会社のレベルが低いだけなのかもしれないが、中小企業であればよくある話なんかじゃないかなと思ったりする。

きちんと選択肢を並べて、それらのPros/Consを整理すれば、自ずと選択肢は絞られるなんてことはよくある。

また、設備投資する際など、その投資が回収できるかどうかは、ある程度試算をすれば判断できることがよくある。最初は皆目検討がつかないと言われたりするのだが、投資額や売上の増分なんかは桁さえ間違えなければ、判断するのに必要な精度くらいにはもっていくことができる。

 

こう考えると、ビジネスにおいては、まずは判断ができる段階にもっていくことが大事。もちろん、必要以上に時間を使って、情報収集や分析をするのは愚の骨頂だが、順番としては判断できたほうがベターと考えるべきである。

その上で、今やらなければいけない意思決定が、判断でできるものなのか、決断が必要なものかを区別する必要がある。どこまで考えても判らないものは、どこかで決めなければならない。

 

今うちの会社では、まさに最終的には決断しないといけない案件を抱えている。必要な情報収集や分析はしないといけないが、どこまでやっても自ずと結論が出るものではないので、然るべきタイミングで、経営者である私が決断をしたいと思う。

 

ということで、決断と判断は、意思決定のタイプの違いである、という話でした。