奈良のポテンシャルと問題点

先月のことだが、奈良に行く機会があった。
直接の理由としては、奈良国立博物館で開催されている「空海 KŪKAI―密教のルーツとマンダラ世界」という特別展を見に行きたいと思い、立ち寄った。
この年になると、仏教の歴史などにも興味が出てきており、たまに本を読んだりしているが、今回の特別展も当時の空気感や、空海までの系譜なども確認でき、興味深い内容だった。
その後、ちょっと時間があったので、奈良公園を散策。東大寺春日大社などを巡ってきた。散歩するのにちょうどいい季節ということもあり、なかなか充実した時間となったのだが、そこで感じたのは奈良のポテンシャル。
 
奈良といえば、言わずと知れた古都であるが、近隣の京都や大阪と比べると、観光地としての知名度やかなり劣る印象。
ただ、今回改めて半日くらい回ってみて、魅力的なところだなと感じたので、まとめてみたいと思う。
 
今回、奈良を訪れたのはおそらく3回目。
1回目は中学の修学旅行(のはず)。正直、京都・大阪は記憶にあるのだが、奈良はイマイチ記憶にない。ただ、たしか東大寺には行ったような記憶がかすかにあるので、たぶん行っているはず。
2回目は、10年くらい前に、地元の某団体に所属していたときに、その団体の全国組織が主催した大会に参加したときのこと。このときもたしか東大寺に行ったと記憶している。
で、今回の3回目。今回も、上述したように、奈良公園を中心に回ってみた。
 
さて、その奈良の魅力だが、まずは歴史的建造物だけではない奈良公園全体の景観の良さが挙げられると思う。
ただ寺社仏閣を巡るというだけでなく、公園全体がきれいに整備されているので、自然と歴史的建造物の調和を楽しむことができる。点としての寺社仏閣ではなく、それらが公園全体の中に位置づけられており、散策するだけでも楽しいなと感じた。
 
あわせて、魅力的だと感じたのが、奈良公園のコンパクトさ。
奈良公園自体は、近鉄奈良駅からすぐの位置で、駅から東大寺までで1kmちょっと、春日大社までの2km程度の距離。奈良公園自体がどこからどこまでを指すのかよくわからないが、半日なら半日ならではの、2日あるなら2日ならでは周り方ができるところだと感じた。
これが京都だと寺社仏閣が点在していて、どこからどう周っていけばいいかわかりにくい。それが京都の良さといえばその通りなのだが、奈良のコンパクトさはそれ自体が売りになるように感じた。
 
同じようにコンパクトな観光地として思い浮かぶのが、軽井沢や由布院。それほど広くはないのだが、リピート客含めて多くの人が訪れている。
奈良は京都と比べられることが多いが、どちらかと言えば、軽井沢や由布院のようなポジションを目指すべきなのではないかと感じたわけである。
 
ただ、そう考えると問題点も見えてくる。
軽井沢や由布院に比べると、面積が広く、わかりやすい観光地が多いため、たくさんの人を受け入れる体制に慣れすぎているように感じた。実際、今回は平日だったにも関わらず人はかなり多く、その大半は外国人と修学旅行客だった。
道路や駐車場もバスを前提にしていているため、徒歩の人から見ると、気をつけないと危ないなと思う箇所の多かった(公園内に完全に入ってしまえばそういった心配もないが)。
途中で休める場所も少ないし、高級なホテルもまだそれほど多くない印象。観光客の中には富裕層も多いだろうが、そういった層がお金の落とすところが少ないように感じた。
せっかくコンパクトでいいのだが、コンパクトであるがゆえに、日帰り観光になってしまい、泊まりは大阪とかになっているのかもしれないと思った。
 
そんなこんなで、京都に比べるとコンパクトではあるものの、軽井沢や由布院といった観光地に比べると広いということが、奈良を中途半端な立ち位置にしているのかもしれないと感じた。
とはいえ、ちょっと離れたところであれば、観光客でごった返すということもなく、ゆっくり過ごすこともできそうで、数と質の両方を追い求めることも可能ではないかと、奈良のポテンシャル感じた次第である。
 
ということで、奈良はなかなかいいところだった、という話でした。