2026年もスタートしたが、振り返ってみると2025年は大きな転換点になった年だと、後から言われるようになると思っている。
何が大きく転換したか、それはインフレが当たり前の世界になったということである。
その兆候はその前からあったとは思うが、30年以上続いたデフレの時代が完全に終わり、インフレの時代に突入したといっていい年が2025年だったと思っている。
そんなインフレが当たり前になるこれから時代、個人としては、資産を紙幣で持っておくのではなく、株や不動産などの実物に移していくことが大事になってくる。また(必要な)消費はできるだけ早くしておくことも重要だろう。家を買う予定があるのであれば、早くしたほうがいい。
一方で、企業の側は、それも中小企業はどう振る舞えばいいのだろうか。ここではこれからのインフレ経済下における中小企業の戦略論を考えてみたい。
実際にどう振る舞うべきかを考える前に、大企業と中小企業ではインフレの影響が大きく異なるように感じているので、ここではその違いについてまとめておきたいと思う。
ここ数年のインフレ(や円安)によって、大企業は好業績になり、株価も順調に上げているが、われわれのような中小企業にとっては厳しい時代になってきている。なぜ、同じ企業なのに、大企業はインフレの恩恵を受けることができるのに、中小企業には恩恵がないのか。
まず第1に、値上げのしやすさの違い。
大企業はここ数年、コスト増を価格に転嫁して業績を伸ばしている。コロナ明けあたりから値上げに対する抵抗感は薄れだし、今では値上げに躊躇がない。一方で、中小企業は、業界にもよるだろうが、一般的にはまだまだその数が多く、過当競争に巻き込まれやすいため、値上げが難しい。われわれの業界でもご多分に漏れずこの構造に陥っており、大手メーカーはどんどん値上げをするが、流通・加工する中堅・中小企業は価格転嫁が難しい。それでも材料費や資材費、運搬費などは、価格転嫁が許容されやすいが、人件費などの目に見えないコストを転嫁するのに一苦労である。
第2に、円安の影響の違い。
大企業は円安の追い風を受け、輸出を拡大することで好業績を誇っているが、中小企業は一般的に輸出比率は低く、その恩恵を受けにくい。逆に円安の影響で、エネルギーなどの輸入品のコストが上がり、企業業績に打撃を与えている。日本全体で見れば、円安は、大企業の業績が上がり良いように見えるが、多くの中小企業にとってはマイナスの影響のほうが大きい。
第3に、賃上げ余力の違い。
もう1つのコスト増の大きな要因として賃上げがある。上述したように大企業は業績がいいので、賃上げ余力があるが、中小企業にはその余力は小さい。ただそれでも賃上げをしないと、採用できないし、流出も加速するので、ついて行かざるを得ない。中小企業だから賃上げはできません、では済まないのである。
と、こんな感じで、価格転嫁できないのにコストばかり上がってくる、インフレ時代のおいて、中小企業はそういう環境下で経営をしていかないといけない。これからとくにう賃上げに耐えきれない企業も多くでてくると思われる。
では、そのような厳しい環境下で、中小企業はどうすればいいか。
文句ばかり言っていてもインフレは待ってくれないので、まずはオーソドックスではあるが、比較的強みがあり、価値提供ができる分野(=値上げがしやすい分野)にリソースを集中させることが大事である。上述したように、インフレ時代は中小企業にとって厳しい時代ではあるが、その原因は価格転嫁できないのに、コストは上がり続けるということだった。中小企業であっても、他社ができない分野であれば、値上げは受容してもらいやすい。ただ漫然と事業運営をするのではなく、そういった分野にリソースを集中する、もしくはそういった価値提供をできる事業をつくっていく、育てていくことが、これまで以上に大事になってくるはずである。
コストのほうでは、賃上げは不可避だし、上昇するのが当たり前になってくる。こういった状況では、できるだけ省力化を推進していくことが大事。そのための設備投資は惜しまずにやるべきだし、やるのであればできるだけ早く実施したほうがいい。それはその投資額がインフレで上がるため、そして資金を借りるのであれば金利も上がるから。ダブルパンチで効いてくるので、できるだけ早く省力化を実現させたいところ。
加えて、賃上げ自体も後追いでするのではなく、先回りして賃上げしていく姿勢が、長い目で見ればコストは低く抑えることができると認識することが大事か。インフレに加えて、労働者人口減の影響も大きく、賃上げは続くし加速するだろうが、ここをケチっていると、従業員の流出につながり、しっぺ返しを食らうことになるだろう。採用コストはますます上がってくるため、流出防止に努めるべし。少なくとも、地域の同レベルの企業と比べて同水準以上の給与レベルを確保し、また労働環境や制度についても当たり前のことをしっかりやって、さらに競争力のあるしくみをつくっていくことが求められる。
あとは、個人の戦略にも重なるが、実物資産を持つことも大事か。本業に集中することが一番ではあるが、並行して不動産や株式などへの投資も一定規模は必要かと考える。あくまでもこちらは補完的なものであり、主客が逆転してはいけないが、リスクヘッジとしての投資も準備しておきたいところである。
と、こんな感じで、これからのインフレ時代、中小企業は大企業よりも厳しい環境下にあることをしっかりと認識して経営に臨む必要があると思った次第である。
ということで、インフレ時代の中小企業戦略について考えてみた、という話でした。