佐藤雅彦の思い出と佐藤雅彦展

先日、横浜美術館で開催している佐藤雅彦展に行ってきた。この夏に家族で東京に出たときに行きたかったのだが、このときは気づいたら前売券が売り切れで断念。今回、出張の合間を見て訪れてきた。

 

佐藤雅彦氏と言えば、稀代のCMクリエイターであり、ピタゴラスイッチなどの番組の生みの親、大学でも教鞭をとる、表現の第一人者であることは言うまでもないだろう。

そんな佐藤氏の授業を、私は大学のときに受ける機会があった。当時大学3年生だったと思うが、佐藤氏が教授として授業を受け持つということで、教室は満員になったのを覚えている。私のまわりに広告業界志望の友人が多かったこともあり、つられて私も前後期と授業をとったのだが、非常に面白かったと記憶している。

 

前期のテーマは、今回の佐藤雅彦展でもタイトルになっている「ルール(作り方を作る)」。すぐに何かをつくろうとせず、自分が好きだと思うものを集めて、そこに共通するルールを探す。そのルールに基づいて、自分も作り始める、という話だった。要素還元法という言葉を使っていて、要するに帰納的なアプローチだなと感じたのを覚えている。

後期のテーマは、「トーン(世界観)」。佐藤氏も説明が難しいと言っていたが、何かしらの世界観を作り込むことが大事という内容だった。ある課題で自分が世界観を感じるものを挙げろ、というのがあったのだが、そのときは野球場のグラウンドをあげた。入場口から入ってから、グラウンドが見えたときに、世界がちょっと変わる感覚があって、これが佐藤氏の言う世界観に当てはまるのかなと思ったことを覚えている。

 

いわゆる研究者のような思考をする人だったように見えたが、このときの授業も面白かったし、その後のインタビューなどを見ても、教育者の側面も強い人だと思う。どう教えるか、どう教育をするのかにも関心があるのだろう。

 

さて、今回の佐藤雅彦展。入場しての第一印象は、年配の人もかなり多いということ。年代的には子育て世代が多いのかと思っていたのだが、10代後半から20代前半は少なかったが、それ以外は満遍なくいた。あきらかに60~70代だなと思う人も多く、佐藤氏の作品が幅広く受け入れられていることがうかがえた。

あとは、映像作品が多くて、そうなるとバッチ式に人が流れるため滞留が多くなるのが難点だなと感じた。ある意味仕方のないことではあるが、混み合って見ることができないものもあったのは残念だった。ただ、その中でもピタゴラ装置の展示があって、その装置を実際に動かすわけではないのだが、その装置が動いている映像がそばで流れていて、これは面白い展示だと思った。実際の装置が見えるというのは、やはり楽しい(ただ、これは写真撮影禁止だったのが残念だった)。

 

総じて楽しい展示会だったのだが、できれば子どもたちといっしょに見たかったなというのが率直な感想。11月の頭までの開催のようだが、すでに前売券は売り切れのよう、その人気ぶりがわかる。できれば巡回開催してほしいし、近くに来ることがあれば、今度は子どもたちを連れて見に行きたい。また、2029年には佐藤氏の地元の伊豆に佐藤雅彦記念館ができる構想があるらしい。これはどこかで機会を探して見に行きたいと思う。

 

ということで、佐藤雅彦展に行ってきた、という話でした。