野球における、チャンスをつくる力と得点する力~プロ野球編

前回のこのブログの記事で、野球というスポーツでは、攻撃面において、選手個々の能力の総和はチャンスの回数に直結して、そのチャンスを得点に結びつけるのは、相対的にベンチの作戦力が寄与するということを書いた。
チャンスをつくる力と得点に結びつける力を分けて考えてみると面白いのではないか、という視点の提案であった。
 
この視点でプロ野球を見てみると、ちょっと面白い気づきがある。
まだ今シーズンのペナントレースは終っていないが、9月1日現在で我らが広島カープが(2位の巨人とゲーム差0.5ではあるが)首位に立っている。
シーズン前の順位予想では、カープを優勝と予想としていた解説者は(広島OB以外では)少なく、だいたい4位予想としている人が多かったが、そんな予想を裏切って8月が終わった段階で首位を走っている。
 
では、広島の戦力が他チームに比べて優れているかと言われれば、ファンの目から見てもそんなことはなく、むしろ劣っているように見える。新井監督をはじめとするベンチワークや作戦面などが冴え渡って、この順位を確保していると見ている人が多いのではないだろうか。
 
で、このことを証明するデータはないだろうか、と考えてみたところ、前回の記事に書いたように、選手個々の能力はチャンスをつくることに直結していて、そのチャンスを得点に結びつけるのは采配などのベンチのマネジメントの寄与が相対的に大きいと考えると、選手個々の能力の総和を塁打数と四球の和で表し、得点力はそのまま得点を使えばいいのか、というアイデアを思いついた。
そこで実際に、8月31日の試合終了時点の数字を見て、選手の能力とベンチワークがどういう比率になっているのか、セ・リーグのここまでの数字を見て確認してみたいと思う。
 
ここでは、これまでの試合の塁打数の合計と四球の合計の和を選手個々の能力の総和として、それを総得点数で割ってみる。
塁打数と四球の合計が選手個々の能力と比例していて、得点÷(塁打数+四球)がベンチワークなどの作戦面と相関が高いと仮定して、その数字を見てみたい。
 
まずは1試合あたりの塁打数+四球(塁打数と四球の合計を試合数で割ったもの)。
DeNA 15.33
ヤクルト 14.19
巨人 14.06
阪神 13.63
中日 13.00
広島 12.52
 
これは予想通りではあるが、広島は最下位。さらに細かく見ると、塁打数だけだと阪神よりも広島のほうがわずかに良い数字なのだが、阪神は四球が多く、その分の上積みがあるので、この数字になっている(広島は1試合あたりの四球数も2を切っており、セ・リーグ6球団中最下位)。
 
続いて1試合あたりの得点数。
DeNA 3.61
ヤクルト 3.48
阪神 3.25
巨人 3.06
広島 3.00
中日 2.59
 
最後に、得点÷(塁打数+四球)。
これが高いほど、より効率的に得点ができているといえ、作戦の優劣と相関が高いのではないか。
ヤクルト 0.245
広島 0.240
阪神 0.238
DeNA 0.236
巨人 0.218
中日 0.199
 
こうやってみると、予想通りではあるが、広島は塁打数と四球の合計は少ない(個々の選手の能力は劣る)が、その少ないチャンスを得点につなげる力(ベンチの作戦の優劣)という点では優秀と言えるのではないだろうか。
もちろん、これは攻撃面だけを見た指標で、投手や守備の面が考慮されていないのだが、広島の采配やベンチワークが優れていることを示す1つの指標になるのではないかと思っている。
 
 
シーズン前の行われる評論家(OB)の順位予想は、どちらかというと戦力予想であり、ベンチワークや采配の力は軽視されているように思う。だから、昨年2位の実績があっても、カープの予想は低かったし、まあそうならざるを得ないと思う。
ただ、ここに監督をはじめとする采配やマネジメントの巧拙が絡んで、事前の予想とは違う結果になりうることがあるので、野球は面白いなと思った次第である。
 
ということで、広島は数少ないチャンスを得点に結びつける能力が高い、かもしれない、という話でした。