VOOXに見る、フリーミアム戦略の難しさ

ここ数年、私は音声コンテンツをかなり利用している。
インターネットラジオVoicyは毎日の通勤やランニングで聞いているし、音声書籍のAudiobookはドライブで遠出するときに活用している。ながら時間をうまく活用でき重宝している。
 
そんな音声コンテンツサービスで、ちょっと前に知ったVOOXというものがある。 
このサービス、いろいろな著名人の講義が、1エピソード10分×6回で構成されており、月に10エピソードまでは無料で聞けるというもの。すべてのコンテンツを制限なく聞くためには月額1,000円が必要になる。
参加している著名人も、楠木建先生やちきりん氏、山口周氏、濱口秀司氏など、個人的に興味がある話が聞けそうな人が揃っていて、これは面白そうだとさっそくダウンロードしてみた。
運営会社は三井物産発の社内ベンチャーのようで、このサービス自体は音声コンテンツサービスにおいては、後発と言えるだろう。
 
さて、さっそく会員登録して使ってみたのだが、すぐにこのサービスの先行きはあまり明るくないなと思った。
私好みの著名なスピーカーが多数登録されていて、その点では非常に魅力的なのだが、このサービス形態、課金形態だと、ユーザーに視聴習慣がつかないと感じたからである。
 
どういうことか。
まず、会員登録しないとコンテンツを聞くことができない。ここにハードルがある。
私は聴きたいコンテンツがいくつかあったので、会員登録したが、次に無料会員だと1ヶ月に10エピソードしか聞けないというハードルがある。
1エピソードが10分なので、無料会員分だとすぐに消費してしまう。ここで有料会員に登録してくれればいいが、多くの人はしないだろう。翌月まで待てばまた聞けるからである。上述したVoicyなどの(無料の)音声サービスは多く存在しており、翌月までそちらで代替することができるので、無理に有料会員になる必要はない。
なので、10エピソード聞き終えた時点で、いったんこのサービスから離れ、次に聞くのは翌月ということになる。
それでも翌月覚えておいてくれればいいが、このサービスの存在自体を忘れてしまう人も多いだろう。
私もその一人で、最初に聞いてから、2ヶ月くらいこのサービスのことを忘れていた。
斯くして、視聴習慣がつく前に、このサービスから離れていってしまうということになる。
 
音声コンテンツは多くのサービスがひしめき合っており、実際に利用している人からみると飽和状態にある。
もちろん、音声コンテンツを利用していない人はまだまだ多く存在しており、そこを開拓の余地はあるが、このVOOXサービス形態、課金形態だと新たな層を取り込むのは難しいと思う。
楠木建先生の「ストーリーとしての競争戦略」では、ものごとが起こる順番が大事と説かれているが、その順番がきちんと考えられているようには感じないというわけである。(そんなサービスに楠木先生がコンテンツを提供しているのは皮肉だが)。
まず集客をしておいて(視聴習慣をつけて)、それから課金していくという順番が大事だと考えるが、そこがきちんと設計されていない。
 
その点、Voicyは、無料のサービスで視聴習慣をつけて、そこからプレミアムリスナーと呼ばれる有料課金サービスに移行させる流れがうまく設計されており、実際私も2人のパーソナリティーのプレミアムリスナーになっている。
この面を広げるフェーズと深掘りするフェーズ(有料課金のハードルを越えさせる段階)をどうつくりこんでいくかは、音声に限らずコンテンツビジネスのキモであると考えるが、2つのサービスを見て差が出そうだなと感じた次第である。
 
と、こんな感じで、VOOXというサービス、今後の展開が厳しいと予想するが、面白そうなコンテンツは揃っているので、私自身は毎月忘れずに10エピソードずつ消化していきたい、という話でした。