ひつまぶしというイノベーション

先週の出張で名古屋に行ってきたのだが、帰りに少し時間があったので遅い昼食でひつまぶしを食べてきた。
ラーメンにしようか、ひつまぶしにしようかで、少し悩んだ。単価は1,000円と3,000円で約3倍、少々お高いなとは思ったが、せっかく名古屋にいるのでということで、ひつまぶしを選択した。
店に入りさっそく注文して、出てくるの待ったわけだが、運ばれてきて思ったことは、うなぎの量が少ないのではないか、であった。
 
それはこの店のひつまぶしのうなぎが少ないということではなく、ひつまぶしのうなぎは全般的に少ないのではないかということに気づいたというわけである。正確に量を測ったわけではないが、同価格帯のうな重に比べると、かなり少ないのではないかと感じた。
 
ただこれは、ひつまぶしのうなぎの量が少ないと文句を言ってるわけではない。これは付加価値のつけ方の模範となる事例なのではないか、そう思ったのである。
 
ご存知かとは思うが、ひつまぶしは3回に分けて食べる。
小さめのおひつにごはんと刻まれたうなぎが入っており、それをお茶碗に入れて食べる。1杯目はそのまま、2杯目は薬味を入れて、3杯目は薬味とだしを入れてお茶漬けのように。
 
今回、この少ない量のうなぎを見ながら、ひつまぶしはうなぎを楽しむという要素ももちろんあるが、加えて、わざわざお茶碗に入れて自分でアレンジしながら食べるという体験価値も売っているのだということに気づいたわけである。
食べる方としては、これらの体験や味の変化も楽しむことができ、その分の多めの対価を支払っているのである。
 
一方の鰻屋としては、食材の費用と抑えて、さらに価格を上げることができる。これはイノベーションと言っても過言ではない。
 
この事例、どのように転用できるか。
要素としては、食べ方を複数を提示することで、体験と味の変化を提供しており、結果として材料費の低減or/and高単価の獲得につなげている。
飲食店であれば、丼ものなどでは比較的簡単に転用できそうである。ひつまぶしのようにお茶漬けのように食べるというのは、鯛茶漬けとかでも見られる(どちらが先に開発したのかはしらないが)。たまごやとろろをトッピングして、最後にそれらとあわせて食べてもらうといったことも考えられるかもしれない。
ただ、他の業界で何か同様のことは今のところ思いつかない。ひつまぶしのように複数回に分けることやちょっとした作業をしてもらうことによる付加価値の創出を、他にも転用ができないか、ちょっと考えてみたいと思う。
 
ということで、今度複数人で鰻屋に入る機会があったら、同価格帯のひつまぶしとうな重を頼んで、うなぎの量の違いを確認してみたいと思った、という話でした。