キングオブコントで感じた、司会アナウンサーの「さん」づけの違和感

昨日の記事で、キングオブコントを見ての審査員の点数のつけ方について言及したが、それとは別で違和感をもった点がある。
それは司会(アシスタント)のアナウンサーが、参加者のコンビ名に対して「さん」づけをすること。
もともと、「さん」とは個人名につけるものであり、組織や団体、今回のようなコンビ名に対して「さん」をつけるようなものではない。
にもかかわらず、最近ではテレビ番組でもコンビ名に「さん」をつけるのは当たり前になっており、そのたびに違和感がもつのだが、今回のキングオブコントではそれだけではない強烈な違和感を覚えたので、その理由をまとめておきたいと思う。
 
違和感をもった理由は3つ。
 
1つめが、テレビ局のアナウンサーが司会者の立場として使っているという点。
上述のように、基本的には「さん」は個人につけるものであると認識している。その前提に立ったときに、テレビ局のアナウンサーという人が、さらには司会者という立場で番組参加者に「さん」づけをしていることに大きな違和感があった。
テレビ番組であっても、その中の出演者が個人的な会話の中で組織名やコンビ名にさんづけするのであれば、まだ理解ができるが、今回はあくまでも番組の進行役というオフィシャルの立場であり、かつテレビ局のアナウンサーが、全国に放送している番組で堂々と誤用していることに、大きな疑問をもった。
 
2つ目が、同じ番組の出演者のことを、視聴者に対して「さん」付けしているという点。
テレビ番組のお客さんは誰かというと、一義的には視聴者であろう。もちろんスポンサーがお客さんという考えもあるだろうが、ここではあくまでも視聴者がお客さんであるという前提に立って考えると、出演者も含めて番組側の人間ということになる。その構図の中で、外側のお客さんである視聴者に対して、内側の出演者のことを「さん」づけするのはおかしい。
一般的な会社間でのやりとりであっても、とくにオフィシャルな場で社外の人と話しているときに、社内の人間のことをさん付けしたり敬称で呼んだりはしないのが一般的である。
テレビ番組という公共性の高い場では、このあたりはもう少し意識すべきだと思うがどうだろうか。
 
3つ目が、お笑い賞レースという客観性が求められる場で、「さん」づけすることによる大会の権威を下げてしまっているという点。
スポーツの試合の場合、その会場での選手紹介も、テレビなどの実況も、選手に「さん」をつけたりしない。これは勝負という場において、客観性を担保するために必要なことだと思う。
今回のキングオブコントのようなお笑い賞レースは、どうしても主観的な要素の強いお笑いというジャンルにおいて、できるだけ客観的に評価をすることで順位をつけようとする試みである。
審査員もこれまで結果を残してきたというだけでなく、きちんと評価のできる人たちを選び、出演順も恣意的にならないように厳選に抽選するなどすることで、大会の権威を高めようとしてきた経緯があると思う。仮に、何らかの恣意的な要素で順位が決まるような賞レースであれば、多くの人がここまで関心を示さなかっただろう。
そのような場において、大会の主催者側の人間が、参加者に「さん」をつけることは、大会の客観性にマイナスに働くことがあっても、プラスに働くことはない。見ている人に客観性を損なう印象を与える可能性すらあったと思う。
 
以上、私が「さん」づけに違和感をもった理由である。とくに、こういった賞レースでは、客観性の演出に気を遣ってほしいと思った次第である。
 
ということで、せっかくいい大会だったのに、余計なところで違和感をつくってほしくなかった、という話でした。