展示会で手当り次第に声をかけるのは、デパ地下やスーパーの試食をイメージしているからかもしれない

昨日の続き。
展示会において、手当たりしだいに声をかけて、パンフレットやノベルティを渡してくる出展者がいるが、なぜそんなことするのか、ということについて書いた。
その理由について、そうすることが見込み客の獲得につながると思っている(錯覚している)からと分析した。
 
なぜそういった行為が見込み客獲得につながると錯覚してしまうのか、もうちょっと考えたみた結果、デパ地下やスーパーの試食を無意識のうちに真似しているのではないかということに行き着いた。
そもそも、人が多く通り過ぎる中で、何かしら声をかける行為と言えば、デパ地下やスーパーの試食か広告のティッシュを配ることくらいしか思い浮かばないが、だからこそ人がたくさんいる中で自社の商品やサービスに興味をもってもらうための行為として、デパ地下やスーパーの試食がイメージされているのではないかと思ったわけである。
 
しかし、ちょっと考えればわかるが、展示会での見込み客の獲得と、デパ地下やスーパーの試食ではビジネスモデルが違うのだが、ここでは少し丁寧に、展示会での見込み客の獲得と、デパ地下やスーパーの試食がどう違うか考えてみたい。
 
まず、どちらも、1,000人が自分たちのブースや売り場の前を通り、10人に声をかけたら1人が反応してくれると仮定する(反応率10%)する。さらに、どちらも見込み客であれば、商品やサービスを気に入ってくれるとする。
 
展示会の場合、1,000人が通ったとして、見込み客である可能性は1%もあればいいほうだろう。だとすると、自分たちのブースの前を通った人の10人が見込み客、990人は見込み客以外となる。自社の商品やサービスをきちんと理解したとしても見込み客にはならない人たちがほとんどである。
そこで、パンフレットやノベルティを一方的に配りまくったとして、10%の人が反応して受け取ってくれたとすると、見込み客10人のうち1人と、見込み客出ない人の990のうち99人が反応してくれる。
この場合、この中から見込み客になるのは1人だけで、見込み客の獲得可能性は0.1%となる。
 
一方で、デパ地下やスーパーの試食の場合。
1,000人が売り場の前を通ったとして、そのおいしさに気づけばその商品を買ってくれる可能性がある人は3割くらいはいるのではないだろうか。買ってくれる人は単純においしいだけでなく、返報性の法則に従っている側面もあるだろうが。
そのような中で、一方的に試食を促したとして、反応して試食してくれた人は、買ってくれる可能性がある人で試食に応じるのは300人の1割で30人、買ってくれる可能性がない人で試食に応じるのは700人の1割で70人となる。
この場合、100人が試食して30人がその試食の商品を買ってくれるということになり、全体からみると3%の人が購入してくれたということになる。
 
ここでの数字は仮定のものではあるが、何が言いたいかというと、展示会と試食で違うのは、見込み客になりうる人の確率がぜんぜん違うということである。
展示会もデパ地下・スーパーも多くの人がいるが、展示会において自社の見込み客になりうる人は、試食の場合に比べてかなり少ないのである。
よって、試食の真似をして、ただ一方的に声をかけてパンフレットを配るだけでは効率が悪すぎるというわけである。
 
では、どうすればいいか。
1%見込み客になりうる人が、自社の商品・サービスに気づいてもらうことに注力すべきである。
ブースのデザインやメッセージを考え抜いて、通り過ぎる人が短時間でこの会社のサービスは自分に関係があるかないかを判断できる材料を提供するのである。
その上で、関係があるかもしれないと思った来場者に適切なタイミングで声がけをする。この一連の流れを設計する必要がある。
 
ひさしぶりに展示会を視察してみて、これができている会社はほんと少ないなと思った次第である。
 
ということで、展示会における声がけは、デパ地下やスーパーの試食のそれと似て非なるものである、という話でした。