ワクチン接種が進んだ後どういう状況になるのか

新型コロナのワクチン接種が進んでおり、10月ないしは11月くらいには希望者への2回接種が終わると言われている。
おそらくだが、接種対象者の7割程度が接種をして、まだ認可されていない12歳未満までの全人口を分母として6割程度が接種するということになるのではないだろうか。
 
従来株であれば、基本再生産数が2.5程度と考えられていたので、60%で集団免疫獲得ということになっていたのだろうが、デルタ株に置き換わってしまったことによって集団免疫獲得までのハードルは上がっている。
デルタ株の基本再生産数は5から10の間くらいと言われているので、5であれば80%、10であれば90%の人口の免疫獲得が必要になってくる。
 
となると、6割程度人口の免疫獲得では、当然集団免疫に至らず、ワクチン未接種者を中心に感染者はおさまらないということになる。
 
さて、このような状況になったときに、社会はどのようになっていくのだろうか。考えられるシナリオは2つ。
 
1つは、マスクの着用、手洗い・うがいの励行などは続けるという条件の下、ワクチン接種者についてはある程度日常の生活を取り戻してもいいということになる、というシナリオ。
この場合、多くの人は日常生活を取り戻すことになるが、それによってワクチン未接種者への感染が起こり、医療キャパの逼迫は一時的に(といってもある程度長期間)起こるだろう。おそらく、現状の第5波よりもひどい状況になり、ワクチン接種者はコロナに感染する可能性は低く、発症・重症化する可能性はさらに低くなるが、他の疾患や怪我などでは適切な治療が行えないということになりかねない。
そのことを理解した上で、日常生活を取り戻し、社会を回していくということになる。
こちらのシナリオを選択した場合は、一時的にワクチン未接種者への感染が広がるが、それが一巡した段階でようやく集団免疫を獲得して、落ち着いた状況を取り戻すということになるのだろうか。ただ、この場合も、ワクチンの効果がどのくらいの期間継続するのか、また新たな変異株の出現など、見通せない部分も多く、さらなる長期化も想定される。
 
もう1つは、これまで同様、感染者が増えてきた場合は、緊急事態宣言を発令するなどして、ワクチン接種者含めて行動を制限するような自粛を要請するというシナリオ。
いくら、人口の6割がワクチン接種をしているとはいえ、医療崩壊という状況では通常の社会活動はできないということで、これまでどおり行動が制限されるということになる。
ワクチン接種者からすれば、なぜ未接種者のために行動が制限されないといけないのかという意見が出てくることが予想されるが、それでも感染が広がった状態では社会や経済を回していくということにはならない、というのがこちらのシナリオである。
 
さて、このどちらのシナリオになるか。
個人的には、1つ目のシナリオのように、ここまで来たらある程度の犠牲は覚悟の上で、ワクチン接種者に関しては日常を取り戻す行動を許容すべきであると考える。
しかし、いざ感染者数が増えてくると、世論やメディアはそれを許さないという方向に傾き、結果としては2つ目のシナリオのようになると予想する。
医療崩壊しながらも、それでもワクチン接種者は社会・経済を回すという状況を、理解して許容するような国民が多いとは思えないからである。とくに、12歳未満の子どもにはワクチン接種が行われていないので、この層で感染が増えてくると、それでも社会や経済を動かしていこうということにはならないと考える。
よって、これまでと同様、長い自粛期間と短い開放期間を繰り返すということになるのではないだろうか。
 
そうなると、良くも悪くも、ワクチン未接種者への感染は進まず、集団免疫の獲得は遠くなる。
その間にワクチンの効果が減退し、新たな変異株の出現で、振り出しに戻る。といったことも想定される。これについては、1つ目のシナリオでも起こる可能性はあるのだが、どちらにしろ早期に元の生活に戻るとは考えないほうがいいのだろうと思った次第である。
 
といういことで、コロナ禍はまだまだ続く可能性が高いと思われる、という話でした。