先日、とある書店で本を4冊買った。〆てちょうど8,000円ということで支払いをしようとしたら、袋は入りますか？と聞かれた。一瞬耳を疑ったのだが、どうやらコンビニやスーパー同様、レジ袋は別売りのようだった。重い本を4冊も抱えるわけもいかず、迷わず袋に入れてもらったのだが、その袋代は8円とのころ。
私はコンビニでも基本的にレジ袋には入れてもらうし、8円自体はなんてことない数字なのだが、なんとも言えないもやもやが残りながら会計をした。
さらにその翌日。別の本屋で娘の本を買った。するとここでも袋は別売りですがいりますか？と聞かれた。
どうやら前日の書店だけが有料化したのではなく、書店全体がレジ袋を有料化したということにここで気がつく。
そのときは車だったし、娘が自分が持てそうだったので、いりませんと言って持って帰った。
その後、マンションの駐車場に着き、車から出ると、娘がその本を落としてしまった。その日は雨が降っており路面が濡れていたため、本も濡れてしまった。
ほんと久しぶりに本屋で本を買ったので、本屋でもレジ袋が有料化になっていたことを知らなかったのだが、本屋がレジ袋を有料化するのは直感的におかしいと思った。
なぜ、それがおかしいと思うのか、考えたみた結果、本屋におけるレジ袋の役割は3つあるのではないかと思い至った。
そして、3つの役割があるのにも関わらず、本屋自体がそのことに気づいていないことに、私が憤りを感じたのであった。
まず1つ目の役割。それは本を運ぶための役割。
これは本来の役割とも言えるが、相対的に重い書籍は数冊買うとそこそこの重量になるので、それをまとめて運ぶために袋が必要になる。
袋がなければ両手で抱えることになるし、そういった場面が多くなりそうなことが想像されるのに、袋に入れるかどうかを聞いてくること自体がナンセンスに感じた。
ただ、ここまでであれば、袋の役割はコンビニやスーパーのそれと変わらない。
2つ目は、本を守るための役割。
本は紙でできているため汚れに弱く、また構造上折れやすい。さらには、すぐに消費するものではなく、読み終わるまでに一定の時間がかかるし、中には半永久的に保管するものもある。
そういった性質の本を守るために、袋は必要になってくると考える。
ここが、コンビニやスーパーのレジ袋とは役割が違うところである。コンビニやスーパーで買ったものは、比較的早く消費されるし、運搬の状態も気にならないのに対して、本の場合はきれいな状態を保ちたいのである。だから、もしかばんを持っていたとしても、そのかばんの他の中身とも接触を避けるためにも、買った本を袋に入れてほしいし、入れるべきと考える。
今回うちの娘のケースでは、私は袋を断ったことを後悔した。きちんと入れてあげれば、たとえ落としたとしても濡れることはなかったのである。
最後3つ目は、本屋で本を買ったという高揚感を演出するための役割
今からもう20年近く前、私は東京に住んでおり、丸善などの大型書店に行くのを楽しみにしていた。丸善に行っては、数冊買って帰り、多い日には10冊近く買って帰ることもあった。冊数が少ないときにはビニールの袋に入れてもらい、多いときには紙袋に入れてもらっていたのだが、そのとき何とも言えない誇らしい気持ちになっていた。
言語化すると恥ずかしいが、自分はこんなに本を読むんだということをちょっとアピールしているような感じを演出してくれるのである。
ちょっといいブランドの服やバッグなどを買ったときと似たような高揚感なのである。
だったらレジ袋を有料で買えばいいのではないかという意見も出てきそうだが、 ブランド物を買ったときに、袋は入りますか？と聞いてくる店はないように、それを客にイチイチ判断させる行為が愚かだと思うのである。そんな演出の機会を本屋が自ら奪っているように感じるのである。
余談だが、そう考えるとレジ袋と表現するのもおかしい。レジ袋というと、コンビニやスーパーのそれを思い出したしまうから。ただ、いいネーミングが思い浮かばないので、ここではレジ袋で統一したい。
以上、3つの役割から本屋はだまって本を袋に入れて客に渡すべきで、袋はいりますか？なんてことを聞くのは野暮で愚かなことであると感じたわけである。
このレジ袋の件は、本屋自体が、本屋で本を買うという行為に対して、お会計のところまでしか想像できておらず、それを持って帰る場面や、帰ってから本を読む場面、そしてその本を本棚に入れる場面が想像できていないようで、非常に残念に感じた。
もともと最近は本屋で本を買うことはめったになかったのだが、今回の一件で、今後はさらに本屋は買うことはさらに少なくなるだろうな思った次第である。
ということで、レジ袋一つとっても、業態によって役割は違うと感じた、という話でした。
