今回のオリンピックでよく観察しておきたいことを振り返る

以前、オリンピックが始まる前にこの期間中に観察しておきたいことをまとめていたので、その振り返りもしておきたい。
 

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この記事は6月末のもので、この時点で整理したのは以下の3点。

・オリンピックが感染状況にどう影響を与えるかについて

・いつオリンピック反対の声より賛成の声が上回るかについて

・どのタイミングで緊急事態宣言を出すのかについて

 
まず、オリンピックが感染状況にどう影響を与えるかについて。
これについては、まずはオリンピックを実施したことによる直接の感染拡大への影響はないといっていいのではないだろうか。
実際に、直接選手と一般市民が交わることはほとんどなく、また選手間での感染も大きく広がることはなかったので、実施自体が感染拡大の原因になったとは考えにくい。
 
ただ、オリンピックやっているんだから自分たちも少々活動しても問題ないよね、という暗黙のメッセージが伝わったこと、オリンピック一色になってコロナ関連の報道が少なくなったことで危機感の薄れにつながったこと、この2点については、感染拡大に影響を及ぼした可能性は大きいだろう。
オリンピック開始前には絶対言えなかっただろうが、始まってしまえば中止にしてほしくない人が大多数だろうから、首相あたりから「これ以上感染が広がるとオリンピックを中止せざるを得ないのでみんな自粛してほしい」といった趣旨のメッセージを出しても良かったのではなかったかと感じた。当然のことながら、このようなメッセージを発したら一部からバッシングは起こるだろうが、テレビなどをメディアは大々的にオリンピックを放送しているわけだから、正面切って批判することはなかったと思うのだが、どうだろうか。
 
続いて、いつオリンピック反対の声より賛成の声が上回るかについて。
これについては開会式の段階で良かった・悪かったという感想が出て一盛り上がり。さらには翌日の柔道初日・翌々日の2日目のメダル獲得で流れができ、大多数はオリンピック賛成という意見になったのではないだろうか。
マスコミも基本オリンピック一色で、期間中はオリンピックを止めるべきだという意見は、医療クラスタ以外からは見ることがなかった(もちろん一部の人たちは反対運動していただろうが)。
始まってしまえば早い段階掌返しが起こるというのは、ある程度予想通りだったと思う。こう言っては元も子もないが、もともと反対していた人も、明確な理由があって反対していたわけではなく、なんとなく雰囲気で反対していたということであろう。
 
最後に、どのタイミングで緊急事態宣言を出すのかについて。
こちらは、オリンピック開幕前の7月12日から、割とあっさりと東京に宣言が発出された。オリンピックがあってもなくてもこのタイミングで発出されたのだろうなと感じた。オリンピックの有無に関わらず、宣言を出したことは良かったことだと思う。
またこの緊急事態宣言の発出は、観客を入れるかどうかには影響したと思われる。無観客が決まったのが7月8日。この前に緊急事態宣言が発出されることが決まっていたので、これが大きな影響を及ぼしたのは想像に難くない。
結果、期間中はずっと緊急事態宣言が出ている状態が続き、今回の宣言は当面8月31日までだが、おそらく延長され、パラリンピック期間中(~9月5日)も続くであろう。
 
以上のとおり、コロナとの関連という視点で、今回のオリンピックを振り返ってみた。
まとめると、オリンピック関係者内でのコロナ感染は大きくは広がらず、また市中感染への影響は与えなかった。これは対策がしっかりしていたからか、たまたま運がよかったからかは微妙なところ。
一方で、オリンピックにメディアの関心が集中することでコロナに関するメッセージが届きにくく、とくに若者を中心に経済活動が助長されてしまったことは問題であった。
 
ただ、コロナ関連でも、コロナ以外でも、今回のオリンピックは正直もっとゴタゴタするだろうと思っていたが、想像していたよりずっとゴタゴタは少なかったという印象である。
端から見ると当たり前に競技や式典が進行したが、コロナ禍でのオリンピックということで、運営に携わる人の苦労は尋常ではなかっただろうということは容易に想像がつく。この点については、もっとクローズアップされてもいいのではないかと感じた次第である。
 
ということで、問題がないわけではなかったが、この状況下で大きな問題もなくオリンピックを終えることができたのはすごいことであると感じた、という話でした。