「高齢者が自粛して若者は経済をまわすべき」はやはり間違いだった

東京などの都市部で新型コロナウイルスの感染者が増えてきている。7月27日の東京都の新規感染者数は、2,848人と過去最多を更新した。
一方で、ワクチン接種の進んでいる高齢者の感染者数は減少しており、それにあわせて重症者数も今のところ低い水準で推移している。
今後、重症者数が増えていくかどうかについては、たしかに低年齢層での重症化率は低いが、それでも感染者数が増えれば絶対数は増加していく。このまま新規感染者が増えるようであれば、どこかのタイミングで重症者数も大きく増加する局面がくると思われるがどうなるだろうか。
 
さて、今回のテーマは、昨年の今ごろ多くの識者(医療関係者以外)が言っていた、「高齢者が自粛して若者は経済をまわすべき」という論はやはり間違いだったということ。
現在、まさにこの論についての実験をしているようもので、多くの高齢者がワクチンに守られている状況においてすらこの感染者数である。これが、ワクチン接種が進んでいない、昨年に行われていたとするとどうなっていたか、火を見るより明らかだろう。
 
当時から何でこんなこと言うんだろうと正直不思議だったが、やっぱりそうなるよなという感想である。
ビジネスマンを中心にこの論は人気があったが、ただ自分たちが飲みに行く口実がほしかっただけで、個人的には相槌打ちながら、この人何も自分の頭で考えていないなと思っていた。
 
この「高齢者が自粛して若者は経済をまわすべき」論には2つの間違いがある。
1つは、高齢者が自粛していれば、若者が感染しても高齢者には感染させないという命題。
ここにはあたかも、若者と高齢者の間に断絶があり、交流がないという前提が隠れているが、ちょっと考えればわかるようにそんなものは存在しない。
家族内はもちろん、病院や高齢者施設などを想像すれば、すぐにこの前提がおかしいことがわかる。
ここに関して、説得力のある説明をした人は、私の知る限り皆無だった。
 
もう1つは、若者だけであればコロナは感染が蔓延しても大きな問題ではないという命題。現状を見れば、これも間違いと断言して問題ないと思う。
たしかに多くの若者にとってはコロナは風邪で終わるが、それでもマクロでみれば一定数以上の人たちが重症化するし、症状が出た人で病床が埋まれば医療崩壊も起こりうるのである。
入院の基準を変更するなど、高齢者に感染が蔓延したケースに比べると対処のしやすさというのはあるかもしれないが、だとしても問題がないとは言えないであろう。
 
最近ではさすがにこの論を主張する人をみかけなくなったが、一定数信じる人がいることを鑑みると、専門家でない人たちが持論を展開するのは非常に危険だと思った次第である。
 
ということで、どちらにしろ感染者が多いと経済はまわすにまわせない、という話でした。