緊急事態宣言の効果はなくなったのか

東京を中心に感染者数が増加している。
高齢者のワクチン接種が進んでいることもあり、低年齢層を中心に感染者増となっている。
東京都には緊急事態宣言が出ているが、すでにその効果は薄く、ニュースでも新宿や渋谷で朝まで飲んで路上で倒れている若者が映し出されている。
 
こうなると、緊急事態宣言というものは意味がないという意見が多くなるが、ほんとにそうなのだろうか。
 
アルコールを伴う飲食は確かに感染リスクが高いが、その中でも当然のことながらグラデーションがある。
感染リスクは、基本的には、飲みに行く頻度と1回あたりの時間の長さに比例すると考えられる(あとは人数もあるが、ここでは割愛)。ここでの1回あたり時間というのは、1店舗での滞在時間を指すのではなく、1回飲みに出てから帰るまでの時間を指す。1次会だけで終われば短い時間になるし、2次会・3次会と行けば必然的に長くなる。
 
そこで、この飲みに行く頻度と、1回あたりの時間の長さで、リスクレベルを分類して、分類ごとに緊急事態宣言の有効性を考察してみたいと思う。
 
まず、飲みに行く頻度と1回あたりの時間の長さを、それぞれ以下のように分類する。
飲みに行く頻度
・まったくなし
・月に1~2回程度
・週に1回程度
・週に2~3回以上
 
1回あたりの時間の長さ
・1次会のみ
・2次会も
・夜遅くまで(明け方まで)
 
この2つの指標でマトリクスをつくり、それぞれのリスクレベルを当てはめてみたのが、以下の表である。
 
  1次会のみ 2次会も 夜遅くまで
月に1~2回 1 3 5
週に1回程度 2 4 6
週に2~3回以上 3 5 7
 
このリスクレベルは、私が肌感覚でつけたもので何か根拠があるわけではないということと、レベルが1から2に上がることでリスクが倍になるという意味ではないことを、断っておく。
 
飲みに出ることがまったくない人はリスクレベル0とし、それ以外の人たちは表のとおり7段階で分類してみた。
この2つの指標のうち、どちらが感染リスクを高めるかというと、どちらかと言えば頻度よりも1回あたりの時間の長さのほうだろうということで、そちらのほうに加重してリスクを配分してみた。
週2~3回飲みに出るけど1次会で必ず帰る人と、飲みに出る回数は少ないがそのときは朝まで飲むという人では、後者のほうが感染リスクが高いという印象があるので、リスクレベル高く評価してみたということである。
 
以上のように、分類してリスクレベルを整理した上で、リスクレベル5以上の人たちにはもはや緊急事態宣言はあまり意味がないだろう。この人たち(おそらく20代や30代といった若い人たちが多い)にとってはコロナの重症化リスクもかなり低いし、さまざまなレピュテーションリスクも低いのだろう。これら人たちはすでに気持ちは振り切れているので、何かしら宣言をかけることでコントロールすることは難しいと思われる。
個人的には、それでも各自がリスクレベルを1つでも下げるような飲み方をしてくれればいいのに、とは思うが当人たちには届かない。
 
一方で、リスクレベル4以下の人たちに対しては、緊急事態宣言といった措置はまだ効力を発揮すると思われる。
この層はある程度レピュテーションリスクも高い人たちが多いと思われ、コロナに感染することのレピュテーションリスクもあるが、緊急事態宣言中に飲みに出てたということを目撃されるリスクもあるので、ルール内での行動をするはずである。
緊急事態宣言が出ることで、それぞれリスクレベルが1くらいは下がるのではないだろうか。
 
そして、リスクレベル5以上の人たちと、4以下の人たちでどちらが多いかと言えば、後者のほうがだいぶ多いと予測する。
そう考えると、緊急事態宣言は、大きな効力は発揮できなくなってはきているが、効果がないとは言い切れない程度にはまだ効力があるのではないだろうか。
 
ということで、ひと括りで考えるのではなく、分類して考えてみてはどうか、という話でした。