高齢者のワクチン接種が進んだので、感染者が増えても重症者は増えないのか

7月に入り、東京を中心に再び感染者数が増えている。
ここ数日の東京都の新規感染者数は1,000人を超え、その増加は鈍化する気配を見せない。
 
さて、この新規感染者の増加についてだが、このことに対する巷の(というかTwitterのタイムライン上の)見方は二分されている。
 
A.感染者数が伸びが止まらない。これではまずいという見方
B.感染者数が増えても若者中心だし、重症者も増えていないから問題ないという見方
 
同じ現象を見ているのに、その評価が真逆というのは面白いが、どちらが正しいのだろうか。
 
ワクチン接種が進み、高齢者の感染者がかなり減っていることから、単純に感染者数だけで見るのはたしかに片手落ちのように思える。
マスコミを中心に、Aのタイプの人は従来どおり、ただ新規感染者数を評価指標として使っているので、そういった点ではものごとを一面でしか捉えていないと言える。
 
一方で、Bのタイプも短絡的かと思う。
現時点では確かに重症者数は少ないかもしれない。ただ、今後感染者数が増えれば、若者中心であってもある一定数は重症者が出てくるだろう。
もちろん、感染者に占める重症者の割合は、高齢者に比べると低いと思われるが、それでも一定確率で出てくる。
 
そうなると、問題は感染した人のうちどのくらいの人数が重症化するのか。
厚労省のHPでは、50代以下の重症化率は約0.3%、60代以上が8.5%。
現状、東京都で感染者数に占める60代以上の割合がだいたい6%くらいなので、新規感染者数が1,000人だとすると、そのうち重症化する人数は以下のようになる。
 
60代以上感染者数60人、うち重症化数約5人
50代以下感染者数940人、うち重症化数3人
新規感染者が1,000人出ると、そのうち約8人が重症化するという計算になる。
 
現在、都内の重症者用の病床数は392床ということなので、この8人が平均して約1ヶ月(=30日)入院するとしても、240床あれば回転するのでどうにかなりそう。
ただ、感染者数が2,000人になると、重症化する人も倍の16人となり、この新規感染者数が続くとかなり逼迫するものと思われる。
 
あと、もう1つパラメータとしては、デルタ株が主流になることによって、重症化率がどう変わるのか。
デルタ株の重症化率が従来より高くなるということであれば、当然重症者数も増えるので、医療キャパはより早い段階で逼迫することになる。
 
要するに、これまでどおりただ新規感染者数をウォッチすればいいかと言えば、重症化率や死亡率といった数字もあわせて見る必要があるし、また重症者数や死亡率は遅行指標なので依然として新規感染者数も先行指標として重要なことは間違いない。
そして、今後デルタ株に置き換わることでどのくらいの重症化率になるかはもっと注目されるべきと感じた次第である。
 
ということで、新規感染者数も重症者数も、両方ともきちんと確認すべきという面白くもなんともない結論になる、という話でした。