使わないセンサーはさびついてしまう

5年半前に、うちの家庭にはじめての子ども(娘)が生まれた。
第一子ということで、何もかもが手探りで、試行錯誤の連続だった。
それでも私のほうがなんとかなるさという気持ちだったのだが、妻のほうはそうもいかない。
この子を無事に育てねばという気持ちと、思ったように行動してくれない娘に対する苛立ちとで、常に殺気立っていたといっても過言ではなかった。
 
そんな中私ができることといえば、妻と娘を離してあげること。
ということで、夕方帰ったらすぐに娘を抱っこ紐に入れて散歩にでかけたり、土日は娘と二人でドライブに出たりしていた。
夜中も娘が泣き出そうものなら、飛び起きて、娘を抱っこしてあやしたりしていた。
長期戦を覚悟するときには、抱っこひもに入れて、眠い目をこすりながら部屋をぐるぐる歩き回っていた。やっと寝てくれたと思って布団に寝かせると、また起きて泣き出す。そんな繰り返しだった。
それがいつごろからか、娘が自分から寝てくれるようになり、夜中起きることもなくなり、飛び起きてあやすこともなくなった。
 
それから約5年、今度は第二子の息子が生まれて、また同じような生活になることを覚悟していた。
あれから5年が経って、多少テクノロジーが発達したのもあって(というか、私自身が新しい技術に慣れてきたというのもあって)、ワイヤレスイヤホンや各種動画配信サービス、音声配信サービスとかを使って、夜中あやすことがあっても、その時間を有意義に使えるようにと準備を進めていた。
 
が、しかし。
息子を夜中あやすということはほとんどない。まったくないわけではないが、娘のときと比べると回数はかなり少ないし、あるとしても1回あたりの時間も短い。
これには、理由があって、息子が生まれるタイミングで妻と相談し、息子については娘のときのように泣いたらすぐにあやすのではなく、しばらく泣かせておこうと決めた。
どうしても泣き止まないときは抱っこしたりしてあやすが、そうではないときは基本放置して泣き疲れるまで泣かせておこうと決めたのである。
なので、私も夜中に息子が泣いていると気づいても、基本起きてあやすことはしない。どうしても寝つかなくて妻が我慢できないときは、そのタイミングで私を起こしてもらって、息子の面倒を見るということにしたのだった。
 
それでも、けっこうな頻度で私が夜中あやす必要があるのだろうなと思っていたのだが、作戦が功を奏したのか、息子も夜中起きて泣き出すものの、泣き止まずに寝ないということは少なかった。
私も息子が泣き出すと目が覚めるのだが、妻からSOSが出るか、もしくはよほど泣き続けない限りは放っているので、夜中眠い目をこすりながら抱っこするということはほとんどない。
 
そして。最近になって気づいたのだが、そういえば私自身が夜中目が覚めることが少なくなった。息子の泣き声で起きるということがめったにないのである。
息子も夜中に起きて泣き出すことがだいぶ少なくなったのかなと思って、妻に聞いてみたら、どうもそうではなかった。
今でも3時間置きに起きて泣き出すのでおっぱいをあげているとのことで、あなたは寝れてて気分がいいだろうね、と嫌味を言われてしまった。とんだやぶ蛇だった。
 
では、なぜ私は息子の泣き声で起きなくなったのか。
それは、自分が起きる必要がないと身体が認識して、緊張感がなくなったからだろう。
娘のときや、息子が生まれたてのころは、妻の機嫌が悪くなってはいけないと、ある意味緊張しながら寝ていたので、少しの泣き声で敏感に起きていたのだが、最近になってその緊張感がなくなって、泣き声に反応しなくなったものと思われる。
 
それ自体は悪いことではないと思うが、妻の機嫌を損なわない程度には緊張感をもっておかないといけないと思った次第である。
 
ということで、泣き声に敏感になるというセンサーは使わないとさびついてしまう、という話でした。