連絡先を書かせるという、やっている感を出すためだけの対策

ここ最近、飲食店に行くと、コロナ対策で連絡先を書いてくれ、と言われることが多くなった。
短冊型に切られた小さな用紙に、日時、名前、住所(市町村レベル)、連絡先、人数といった項目が並べられている。
おそらく、この店でコロナ感染者が確認された場合、同じ時間帯にいたお客さんに連絡しますよ、ということだと思われるが、たとえ感染者が出たとしても連絡がくることはないものと思われる。
なぜそう考えるのか、以下にまとめてみたい。
 
まず誰が感染したかということで、場合分けしてみたいと思う。
考えられるのは、お店の従業員とお客さん。この2パターンだろうか。細かく言えば、お店の取引先の人などもいるが、ここでは割愛。
 
では、まずお店の従業員がコロナに感染した場合。
その店の従業員が、発熱の症状があったか、感染者との濃厚接触者があったかで検査をして、陽性になったとする。
すると、発症してから(未症状であれば検査してから)2~3日前までの濃厚接触者が誰かを割り出す。
ここで、お客さんは濃厚接触者になりうるかというと、一般的にはなりえない。
よほど常連さんで、長く話し込むようなことをすれば別だが、普通はオーダーを聞くのと、料理を運んでくるのと、会計をするのとで、計3回。どれも1分足らずのコミュニケーションだろう。交わされる会話の量もたかが知れているし、このご時世お互いマスクもしているだろう。
ということで、濃厚接触者には該当しない。よって、連絡がくることもない。
 
次に、お客さんがコロナに感染した場合。
まず、お客さんがコロナに感染したとして、そのお店に律儀に連絡するかと言えば、大半のお客さんは連絡しないだろう。
それは店に迷惑かけてしまうという思いかもしれないし、濃厚接触はなかったと判断するかもしれないし、理由はまちまちだが、たとえ感染したとしても連絡しないケースが多いと思われる。
 
では、連絡があった場合、同時間帯にいた他のお客さんに連絡するかどうか。
実際そういう場面になったら、判断が難しく困るのではないだろうか。
もし、連絡をしなければ、わざわざ連絡先を聞いておきながら、感染者情報があるのに連絡しなかったと文句を言われるリスクがある。逆に連絡をすれば、感染リスクはかなり低いのに余計な心配をかけてしまうことになる。
その店でどんちゃん騒ぎでもしていれば別だが、普通に飲食するような店であれば、別のグループのお客さんどうしで感染はほぼ起こり得ないのに、それをいちいち連絡するとなるとパニックなるおそれすらあるので、連絡するのかどうか判断しかねるのではないかと思う。
 
以上のように、連絡先を聞いたところで、わざわざ連絡する必要があることにはならないし、連絡すべきかどうか悩む結果になると思うので、最初から連絡先なんて聞かないほうがいいのである。
それよりも、お客さんと従業員や、他のグループのお客さんどうしが濃厚接触になるようなシチュエーションにならないように注力すべきである。
 
このようにちょっと考えれば意味がないようなことでも、やっている感を出すための対策はまだまだ多い。
コロナの問題が浮上してから、もう1年以上経つので、そろそろ効果のある・なしの見極めができてきてもよさそうだが、一向にその兆しは見えない。
今回の場合は、客側は連絡先を書くだけで、(他で悪用されなければ)そんなに労力がかかるわけでもないので、特段文句も言わずに書くが、個人情報の取り扱いに対して厳しいご時世、店側からしたら余計なリスクを抱えてしまう可能性があることは勘案しておいたほうがいいのではないかと思った次第である。
 
ということで、もう少し具体的なシーンを想像して対策を考えられないものかと思った、という話でした。