メールの誤用に見る、裸の王様状態

私が前職をやめて地元に戻ってきたとき、(些細なことではあるが)驚いたことがある。
それはメールの作法が違うこと。
 
いろいろと違いはあったが、その中でもよく覚えているのが、宛名の問題。
メールの書き出しは、誰宛かを明記するが、その宛名に「田中部長様」や「佐藤課長殿」のように、役職名のあとに「様」や「殿」をつけるのである。中には「各位殿」なんてのもあった。
前職時代は、「田中部長」「佐藤課長」といった宛名で書き出していたので、すぐにこの差に違和感を覚えた。
 
私は新入社員として前の会社に入ったとき、別に研修で教わったわけでもないが、メールの書き出しは、公式なものは「名前+役職」の宛名で、一般的なものはさんづけで、まわりのみんなが書いていたので、見様見真似でそうしていた。
それが当たり前かと思っていたのだが、地元に戻り今の会社に入ったときには違っていたので、ちょっと驚いた。
 
役職名のあとに「様」や「殿」をつけるのは、おかしいだろうと思い調べてみたら、やはりこれは二重敬語ということで、誤用であることがわかった。
役職名自体が敬称なので、それに「様」や「殿」をつける必要はなく、逆に失礼にあたると説明されていた。
 
最初は、うちの会社が地方の会社だから、そのあたりをきちんとわかっておらずに誤った用法でメールを書いているのだろう、と思っていたのだが、どうも違うようであった。
取引先のメーカーや商社も、みなこの誤った方法で宛名を書いているのである。
少なくとも、うちの会社の属する業界は、みんなと言っていいほど、敬称+様・殿を使うのである。
 
このことを知ったときには、けっこうショックであったが、ここで2つの疑問が思い浮かんだ。
1つは、誤用している大企業では、多くの人は誤用であることは知っているけど、いちいち訂正するのはめんどくさいからそのまま使っているのか、それとも誤用であること自体を知らないのか。
おそらく、大多数の人は誤用であることを知らないと思われる。
私もそうだったが、入社したときからそうなので、疑問に思わないものと思われる。
 
もう1つの疑問は、仮に誤用であることを知らない人が多いとして、大企業であれば、他の大企業との付き合いは当然あり、メールのやり取りの中で気づかないのだろうか、というもの。
私の前職はいわゆる外資系のIT企業であったが、今私がいる業界含めて、多くの大企業が顧客であった。
正しい用法をしている会社と、そうでない会社があったとして、それらの会社どうしが交われば、正しいほうに訂正されるはずと思うのだが、どうもそうはなっていない。
思っている以上に、こういうことを訂正するのは難しいのかなと思った次第である。
 
ということで、裸の王様の状態が、会社どうしでも起きているのではないかと思った、という話でした。