私が幼少のころから育った家は、平屋建ての借家で、両親が家を建てるまでその家に住んでいた。
その借家のトイレは和式のトイレだったのだが、物心ついたときからそうだったので、とくに違和感もなく育っていった。
学校のトイレも和式がほとんどで、これが当たり前という感覚であった。
しかし、いつのころからか、洋式のトイレが主流になりだし、引っ越した新しく建てた家では、当然のように洋式のトイレであった。
それは1990年代のはじめだったので、80年代くらいから徐々に切り替わり始めたのだろう。
2021年の現代において、アパートであれ、マンションであれ、一戸建てであれ、新築の場合、トイレは100%といっていいくらい洋式であろう。
現時点でなくても、おそらく2000年前後くらいからは、ほぼ洋式のトイレだったのではないかと思われる。
いわゆる住宅用のトイレでは、洋式でほぼ占められているのだが、とくに地方に新しくできる施設では、大の便器が複数ある場合、そのうち1つは和式であることがよくある。
その他は、洋式でかつシャワートイレ付きなのにも関わらず、1つだけ律儀に和式が用意されているのである。
さすがにここ2~3年でできた施設では、こういうケースはだいぶ減ってきているように感じているが、ここ5年くらい前までにできた施設では、和式のトイレが1つある事が多い。
先日も、娘と山間にある、比較的新しい温泉とキャンプ場がある施設に行ってきたのだが、やはり和式トイレがあった。
外観はまだ新しくきれいなので、おそらくここ10年くらいに建てられた施設だと思うが、3ヶ所あるトイレすべてで、律儀に和式トイレが1つずつ用意されていた。
誰も使わないであろう和式トイレがきちんとあるというのは、こういう地方の施設ではよくあるのである。
他にも、ショッピングモールなどで、2000年代はじめから2010年代中盤までにつくられたものでは、同じように和式トイレが1つ用意されていることが多い。
都市部では比較的早い段階から、すべて洋式というパターンが多かったが、地方であればあるほど、こういった傾向があるように感じている。
普通考えると、すべて洋式(できればシャワートイレ付き)でいいのではないかと思うのだが、なぜこうした和式トイレを1つだけ設置するということが起きるのだろうか。
おそらくであるが、なぜ和式のトイレがないのか、というクレームが来るのではないかと、心配するからであろうと考える。仮にそういうクレームが来たとしても、きちんと選択肢を用意してますよと対処できるよう、1つだけ設置しているのだと思う。
しかし、これは利用者からするとありがた迷惑である。
あくまでも私の感覚であるが、このご時世、和式のトイレで用を足したいと思う人は1%もいないだろう。
洋式で、できればシャワートイレ付きを選択するのがほとんどではないだろうか。
それが、いざというときに、洋式のほうがいっぱいであれば、仕方なく和式を使わないといけないということが起こりうる。
存在するかどうかわからないノイジーマイノリティに忖度した結果、迷惑を被るのである。
些細なことかもしれないが、こういうところに責任回避の姿勢が見られるな、と感じた次第である。
ということで、全体の利益を考えるのではなく、責任を回避するための無駄な忖度は、日本社会においてはけっこう多いのではないかと思った、という話でした。