n=1というマーケットを意識する

ランニングや運転中に耳から情報を入れようということで、Voicyというサービスを多用しているしているが、最近「松丸友紀のシナぷしゅラジオ」を聞き出した。
 
テレビ東京松丸友紀アナウンサーは、同局の深夜番組「ゴッドタン」で長年アシスタントを務めていて、芸人顔負けの対応をするし、毒のあるコメントで何度も笑わせてもらったことがあるので、フォローしてみた。
 
このVoicyのほうは、松丸アナがプロデューサーも務める赤ちゃん向け番組「シナぷしゅ」という番組のPRラジオということで、深夜番組のトーンとはちょっと違うのかなと思いながら聞き始めたのだが、随所に松丸アナの頭の良さのようなものが感じられ、楽しく聞いている。
 
「シナぷしゅ」というテレビ番組は、2020年4月放送開始の、民放初の赤ちゃん向け番組で、スポンサー枠がすぐに売り切れたというニュースを目にしたことがあった。
開始当初4歳半だった娘はYouTubeばかりをみていて、リアルタイムでは見ていなかったのだが、そろそろ半年になろうかという息子もいるので、今後チェックしてみたいと思う。
 
さて、「シナぷしゅラジオ」のほうだが、一番最初の回で松丸アナが、プロデューサーとしてどういうコーナーをつくったのか、その経緯について話している部分が印象的だったので、ここで紹介したい。
 
この「シナぷしゅ」という番組は、テレビ東京の子育て世代がスタッフとして集められてつくられた番組ということで、一児の母である松丸アナもプロデューサーとしてどういうコーナーをつくったらいいか考えたという。
そこで、まずは我が子が目をキラキラさせる番組にしたいと思い、自分の子どもが興味があることはなんだろうかと考えたという。
松丸アナの息子は乗り物が大好きということで、週末のなると毎週のように東京駅に新幹線を見に行っていたそうだが、その中でも連結シーンが異様に好きだということに気づく。
はやぶさとこまちが連結するところが見たいといういつも言われているところから、ひたすら連結シーンを見せたらどうかという発想に行きついたと言う。
ただ、新幹線の連結シーンばかりを見せるわけにもいかないということで、もう少し工夫が必要だと考えてまわりを見回したところ、他にも連結するものはたくさんあるということに気づき、それを見せるコーナーにしようということになったとのことだった。
また、松丸アナの息子は、当時「連結」という言葉を使えず、「がっしゃん」という言葉を使っていたことから、そのままこの「がっしゃん」をコーナー名に採用したとのこと。
 
この話で、すごいなと思ったのは2点。
 
まずは、具体から入らず、抽象的なコンセプトというか、目指すべきところから考えているという点。
この番組の方向性や目標を、「我が子が目をキラキラさせる番組」と定義することで、その後のアイデア出しの具体化がしやすくなっている。
これは簡単に聞こえるかもしれないが、日ごろなかなかできないことで、何かアイデアを出そうと思うと、すぐに具体から入ってしまいがちになる。
具体から入るとなぜいけないのかというと、アイデアを考える枠組みがないのでアイデア出しが非効率になってしまうということと、当初の方向性と合致しないアイデアが出たとしてもそれを採用するのかしないのかの判断が難しくなるからである。
いったん抽象化したコンセプトを設定して、そこから具体的なアイデアに入っていく。ここは自分も意識したいところである。
 
もう1つは、息子というn=1のマーケットを明確にしているという点。
万人に受けようとして、誰からも受けない、ということは往々にしてあることだと思う。
自分であったり、身近な人であったり、そういう人たちがほしいと思わないものをつくっても、誰も振り向いてくれないのである。
この場合も、まずは自分の息子という、一見狭いけれど身近なターゲットを設定し、ここに深く刺さるコンテンツをつくろうとしている。
この発想というか、潔さがすばらしい。
実際、1年近くたった現在もこのコーナーは続いているので、このターゲット設定は正しかったのだろう。
 
松丸アナはこれらの思考法を、意識的にやっているのか、それとも無意識のうちにやっているのかはわからないが、どちらにしろ頭のいい人なんだろうなと思った次第である。
Voicyでも、日ごろのちょっとした気づきや、番組づくりの話が聞けそうなので、今後もチェックしていきたいと思う。
 
ということで、みんなに好かれようとするよりも、1人に深く好かれようとしたほうがいい(こともある)、という話でした。