医療キャパシティは、増やしてはいけない

新型コロナ第3派の広がりを抑えるべく、1月上旬に11都府県に対して発せられた緊急事態宣言も、栃木県を除いてもう1ヶ月延長されることとなった。
この延長に対しては、賛否意見が分かれている。私は延長やむなしと思っているが、ここではそのことを主張したいわけではない。
 
そもそもなぜ緊急事態宣言が出されないければならないのか、それは医療キャパシティがなくなってきているからである。
今回はこの医療キャパシティをどう捉えるべきかということについて考えてみたいと思う。
 
まず医療崩壊が起きてはいけない、ということに異論を唱える人はいないだろう。
医療崩壊をどう捉えるかは人によって意見は異なるだろうが、ここでは医療キャパシティに余裕がなくなってしまうこと(患者>医療キャパシティ)と定義したい。
 
では医療崩壊が起きないためには、常に患者<医療キャパシティを保たないといけないことになる。
取りうるべき方策は大きく2つ。
1.患者の数を抑える・減らす
2.医療キャパシティを増やす
 
まずは1からだが、さらに取りうる方策はさらに2つに分かれる。
A.感染者数を抑える・減らす
B.医療キャパシティを有効活用するために、治療が必要な人だけに振り向ける
 
Aについては、マスクを着用する、3密を避ける、手洗い・アルコール消毒をするといったミクロ的な活動から、今回の緊急事態宣言のようなマクロ的な政策まで広く含まれる。
Bについては、感染者といっても、症状なしの人から重症の人までバラつきが多いので、症状がある人のみに医療キャパシティを充てることで、医療キャパシティを有効活用しようとする方策がここに含まれる。新型コロナウイルス感染症の分類を5類感染症に変更するといった政策などもここに当てはまる。
 
また、2については、病院などの施設を増やしたり、設備の導入、人の育成など直接キャパシティを増やすといったことや、現在コロナに対応していない病院にも対応してもらうといった取り組みが含まれる。
 
また、症状のない人を隔離するための施設としてホテルを活用するということについては、2と1-Bのあわせ技と捉えることができる。
 
さて、これらの方策は、どれか1つしか選択できないというものではないので、複数組み合わせて選択すればいいと思われるが、私は単純に感染者数を抑える・減らす(1-A)に注力すべきだと考える。
 
それはなぜか。
医療キャパシティを有効活用しようとする取り組みや、キャパシティを上げようという取り組みは、(放っておけば)指数関数的に増えてしまう感染者数の前では、焼け石に水になってしまう。
キャパシティを無限に拡大できるのであればそれも1つの選択肢になりうるが、それはできない。
となると、感染者数が医療キャパシティを上回ってしまうのは、早いか遅いかのタイミングの違いだけになる。
そして、どのみち感染者数が医療キャパシティを上回れば、抑え込みに走らないといけない。
だとすれば、キャパシティギリギリまで感染者増を許容してから抑え込むよりも、それ以前に抑え込みに転換したほうが早く抑え込める。
 
ということで、キャパシティを有効活用したり、増やすということは、焼け石に水であるどころか弊害すら生んでしまうと考えられる。
医療キャパシティよりかなり低いラインを設定して、感染者数がそのラインを超えたらハンマーを下ろすしかないのである。
そのラインの設定を、50人程度にするのか、中国や台湾のように1人でも出たらにするのかは、政治判断になるが。
ただ、500人というラインは高すぎて、今回の緊急事態宣言のようにハンマーを下ろす時期が長くなりすぎると思うのだが、いかがだろうか。
 
ということで、どこまでいっても指数関数って理解が難しいんだろうな、と思ったという話でした。