高付加価値商品を低価格市場で売る

昨日の日曜日、娘(4歳)とショッピングセンターに買い物に出かけた。
とくに目的のものがあるわけでもなかったので、そのショッピングセンターにあった100円ショップに入って、店内をぶらぶらしてた。
娘はあれもこれも気になり、いろいろと手を出そうとするのだが、そのたびに「ダメ」と言いながら店内を散策してた。
 
すると、娘がこれほしいと、ボールらしきものが入った袋を指さすので、またダメといいかけたのだが、これはなんだろうとよくよく見てみると、それは「バスボール」というもので、いわゆる入浴剤だった。
入浴剤がボール状になっていて、その中におもちゃが入っている。それを風呂に入れると、溶けて中からおもちゃが出てくるというしくみなようだ。
恐竜や動物、車やキャラクターなど、多くの種類のバスボールが置かれている。
 
これだったら、娘も買い物した気分になるし、いつもなかなか入りたがらない風呂にもすんなり入ってくれそうだ。しかもそれが100円ということで、1つだけ買ってあげようと言うと、娘は指輪が入ったバスボールを選んだので、これを買って店を出た。
娘はご満悦の様子で、こちらとしても低コストで娘の喜んでいる姿を見て、素直をうれしくなった。
 
そのうれしい気持ちのまま来るに向かっていると、あることに気がづいた。
このバスボール、入浴剤と考えるとえらい高いのではないか、と。
 
帰ってから調べてみると、同様の固形状になった入浴剤(バブなど)は、1包でだいたい35~40円らしいことがわかった。
やはりこのバスボール、入浴剤としては非常に高かったのである。
 
そんなよくよく考えると高いと思われる商品が、安売りの代名詞で100円ショップで売られていることに、なんとも言えない違和感を覚えた。
そして、そう考えると、このバスボールなかなかよく考えられているのではないかと思えてきた。
 
そこでこのバスボール、何がおもしろいのかをちょっと考えてみたところ、以下の3つの理由が挙がってきた。
 
1つ目は本来の入浴剤から価値をずらしていること。
本来の入浴剤の価値は「しっかりと温まること」かと思う。
しかし、このバスボールは完全にこどもの遊び道具になっている。どんなおもちゃが入っているかワクワクしながらお風呂に入る、という経験が売られているのである(ちなみに娘が買った指輪のバスボール、4つの種類のうち1つが入っていて、それは風呂に入れて溶かさないと、どれが入っているかわからないようになっている)。
 
目的をずらしてあげることで、付加価値が生まれ、その分価格も高くできるのである。
クレイトン・クリステンセン教授の「ジョブ理論」に当てはめると、このバスボールは、駄々をこねる娘にちょっとした買い物をしたという満足感を与えるというジョブと、お風呂をめんどくさがる娘を(ワクワクさせながら)入れるというジョブを片付けてくれたと言える。
 
2つ目は、バスボールの粗利は一般的な入浴剤に比べて高いと思われること。
一般的な入浴剤をつくるのと、このバスボールをつくるのとで、おもちゃの分だけ多少原価は高いかもしれないが、それほど大きな差はないだろう。
となると、一般的な入浴剤が1個40円に対して、バスボールが100円なので、ほぼ同様の原価に対して売値が2.5倍となり、粗利額は(率も)高くなる。
ちょっとした違いで類似商品の価格や粗利が変わってくるのである。
さらには、私は対価としての100円は極めて安いと感じたのだが、客が安いと感じるのに、類似の一般的な入浴剤に比べて粗利率が高いところにビジネスの面白みを感じた。
 
3つ目は、すでに書いているが、一般的な商品よりも高価格な商品が、安売りの代名詞の100円ショップで売られているということ。
高価格と言っても単価は100円で、普通に考えると高くはないのだが、それでも冷静に考えると普通より高い商品が、100円ショップと安売りの代名詞の店で売られていることにビジネスの妙を感じた。
どこで売るかということは、マーケティングの4Pのうちの1つ(Place)でもあるように、非常に大事だなということを再認識できた。
 
以上のように、ありふれた商品でも、その価値をずらして上げることで、単価や粗利を上げることができるということ、さらにはその価値を一番感じてくれる客がいる場所で売ることの重要性、などなどをこのバスボールという商品の買い物を通じて感じることができた。
 
ということで、普段の何気ない購買行動の中にも、ビジネスのヒントがあるなという話でした。ただ、これをうちの会社のビジネスにどう転用するかまだ思いついていません。