昨年末にクルマを買い換えた。これまで、東京にいたときは車なんて必要なかったし、地元に戻ってきてからは妹と父の車のお下がりをもらっていたので、はじめてのクルマ購入である。
もともとクルマにはあまり興味がなく、動けば何でもいいやという感じであったのだが、いざ買うとなると自分がほしいというクルマを買いたいと思ってくるものである。
で、心の中ではこのクルマにしようというのは決まっていたのだが、クルマ全般に関する知識が乏しく、(誰にもツッコまれていないのだが)まわりからツッコまれたらどうしようと思いながらそのクルマの情報ばかり集めていた。
うちは3人家族なので、正直ここまでの大きなクルマは必要ないのだけど、キャンプもはじめたことだし、車中泊もしてみたいということで決めた。などという言い訳を用意してきたのだけど、正直なところ見た目で決めたのである。
というわけで、年末にそのCX-8がやってきたわけだが、今のところ問題なく、そして楽しく運転をしている。
さて、今回のクルマ購入にあたり、ウェブやらYouTubeやらいろいろと情報収集してきたわけだが、せっかく買うのであれば、どういった想いをもって開発し販売しているのか、ということも知りたくなり、納車に前後してマツダに関連する書籍も何冊か読んでみた。
元代表取締役会長の金井誠太氏へのロングインタビューをまとめた書籍。
いろいろと勉強になったのだが、とくに面白かったのが、フォード傘下にあるという状況において、マツダとフォードそれぞれの会社の特徴や強みの違いに気づき、異なる開発の方向性を志向するようになったという話である。
フォードの志向は、世界中で売るクルマをサイズ・車種ごとに統一して、開発、大量販売しようという、いわばメーカー間に横口を通す、ヨコの統一。私たちが考えたのは、ひとつ理想型を軸にサイズ・車種を開発して、市場別に微調整する。マツダ社内で完結しようとする、タテの統一でした。
数多くのブランドを傘下に抱え、自身も世界の最大手メーカーという立場から、部品の共用化などの「ヨコの統一」を目指すフォードに対して、理想型を軸にさまざまなタイプの車種を開発するという「タテの統一」を目指したマツダ。
これは事後に話を聞くと、それはそうだよなと思うが、実際に中でそのように思考し、実現させるというのは口で言うほど簡単なことではなかったと想像する。
とくに、そこに気づくというのがすごい。親会社から言われることが正しいという雰囲気が社内を覆われるということは想像に難くない中で、本当に自分たちが輝ける形はどうなのか、自分たちの価値が発揮できるのはどういうことなのか、そういった問いをし続けなければ、この気づきは出てこないと思う。
いわゆる「常識を疑う」をやり続けないとこの解にはたどり着かなったと思うのである。
そういった面で、マツダ社内にはいい意味で素直ではなく、本質を見極められる人たちた揃っていて、またそういう人たちが活躍できる土壌というか、上の人たちの度量があったと想像できる。
ハイブリット全盛の時代に内燃機関の開発に集中するという意思決定をしたという話も出てきたが、これも同様で、世間で言われている常識に踊らされることなく、自分たちの強みとこれからの情勢を冷静に見つめて結論出してきたということがよくわかる。
戦略というか会社の方向性というのはこうやって、常識にとらわれずに、自分の頭で考え抜くことが大事だということも再認識させてもらった。
また、マツダという会社やそこで開発されたクルマというプロダクトが、山口周氏の言うところの「役に立つ」から「意味がある」に変貌していこうとしているのがよくわかった。
現在はクルマに限らず、商品そのものだけではなくストーリーも買っているのだ、などと言われるが、私の場合はクルマそれ自体の購入に加えて、本を読むという行為から、マツダの戦略そのものと戦略に取り組む姿勢も得ることができた、良い買い物だったと感じている。
ちなみに、他にもこれらの本を読んでみました。